おすすめの本RECOMMEND

いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2025/03/25 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
10 YEARS AFTER
著者:稲田幸久
出版社:ザメディアジョン

広島本大賞受賞作家、稲田幸久さんの最新刊です!
3/24にオープンの広島駅の新駅ビル『ミナモア』が舞台となるこの小説。
そうか~…今回は歴史小説じゃないのか…。
胸踊る合戦シーンや熱い時代のうねりはないのか…。なんて思っていたのは大間違いでした。
今から50年前。広島駅前で家族のために懸命に働く母親。
そして今。思い悩む小説家。
それから10年後。『ミナモア』で自身の生き方を振り返る女性。
まず、登場人物の語り口が、広島弁のリズムが、読んでいて胸の奥まで沁みてきます。体に、魂に馴染む。
ただ普通に生きている人たち。
時代を動かしたわけでも、何かを成し遂げたわけでもない。
そんな『わたしたち』から手渡されて行くバトンがつながって今の広島、そしてこれからの広島へ伝わってゆきます。
過去からの祈りが、こんな未来になればいい。
歴史って、思いを繋ぐことなんだ。
この小説も、まさに歴史小説だと思いました。
そして、やっぱりエモい友情もあり!
女性が語り手の物語も新鮮でした!
そしてあの一文…めっちゃかっこいい!!