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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2025/04/15 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


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ここで唐揚げ弁当を食べないでください

著者:小原晩

出版社:実業之日本社

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ここで唐揚げ弁当を食べないでください

今年も、桜の見頃がそろそろ終わる。

別れと新たな始まりの季節。一面に咲く桜の木の下でいろいろな誰かとお花見をした。
お花見はいつでもみんな大好きだ。
家族と行ったり、友達とばか騒ぎをしたり、恋人と手をつないで歩いたり。
でも、わたしは、ほんとうは。

人生は、あと何回桜が見られるか。みたいなのをどこかで見たか聞いたかした。
こんな美しい一瞬は限りがある。だから毎回ありがたがってちゃあんと感動しなけりゃならんらしい。いっきにお花見が負担になった。ただでさえあんまり感動するのはこころの負担になるので好きじゃない。誕生日もたいして祝われなくていい。ものすごいいいことも、びっくりするので起きなくていいです。
もこもこ咲いて散っていく桜より、その後に開く葉桜の緑のほうが実はずっと好きだった。毛虫を避けながら木の下を歩く方が。
朝、啓文社の駐車場のごみ拾いのときに、拾うペットボトルや弁当の空やマックの紙袋やなんかに、一面スタンプのように付いた桜の花びらがとってもかわいかった。わたしには、これくらいのお花見でいいです。

この本を読んで気づいたこと。
仲間と見上げた夜桜も、駐車場のアスファルトに貼りついた花びらも、どちらも等しくかけがえのない。
すべての瞬間が、振り返ればいとおしい。
それなのにわたしたちは、そんな『今』を無駄遣いして進んでゆく。
その無駄に使ったことすらきらきらとして見える。
うあぁぁぁぁぁあ。まじでやめて。
わたしの人生が息も詰まるほどに美しいってことを、どうか気づかせないで欲しかった。
感動するの苦手だって言ったじゃん…。



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