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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2025/05/27 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

駄目も目である 木山捷平小説集

著者:木山捷平:著 岡崎武志:編

出版社:筑摩書房

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駄目も目である 木山捷平小説集

読書のスタイルは人それぞれ。NHKの「朝ドラ」をリアルタイムで毎日見る人と、録画して一気見する人がいるように、毎日少しずつ読む派と休日に一気に読破(派)がいる。なかには寝ても覚めても食事中も手放さないという「本の虫」派も。

無論これが正解というものはない。いま私が試しているのは三角読み。ごはん、おかず、汁物を交互に食す三角食べからヒントを得て、勝手にそう呼ばせて頂いた。あるとき文庫本を3冊リュックに入れていて、それらを順不同で取り換えながら読んだことがきっかけだ。この「三角読み」という手法とネーミング、もしかして発案者として読書界隈にその名を残せるのではなかろうか?
はやる気持ちを抑えてネットで調べてみた。願わくば、まだ誰も言ってませんように。

「三角読み」とググると精神科医の名越康文さんが、「三角読み読書術」(2018年12月14日公開:WEBメディア「PHPオンライン」)として提唱されていることが分かった。私が考えることなど、とっくに誰かが思いついているはずだよな…と記事を読んでみた。
もともと集中力がなく散漫なため、「読めても一度に十数ページ」という名越さんにカウンセリングのお師匠さんは、「名越くんはつくづく集中力がないね。でも散漫力はとてもある。いや、きみの散漫力はすごい。その散漫力を生かして勉強しなさい」と言われたそうである。

1冊の本をずっと読むという一般的な読み方ではなく、散漫力を発揮しながら高レベルの本や、すらすら意味がわかる本2、3冊をかわるがわる読む。そうすると飽きないだけでなく、「この本とこの本のこの部分を結びつけたら、テーマが深堀りできてすごい見方ができる!」といった発見ができるのです。(同じく「PHPオンライン」より)

いま個人的に深掘りしたいテーマは「老い」である。若者と呼ばれていた頃から「年寄りくさい」といわれ続けてきた。おばあちゃんちによくある日めくりカレンダーの人生訓ではないが、はしゃがない、強がらない、欲張らないという私の性格というか気質から、そう思われていたのである。
還暦も過ぎ、名実ともに高齢者(65歳からが前期高齢者)と呼ばれる日も近い。若い頃から「じじむさい」と言われイヤな思いもしてきたが、やっと実年齢が性格に追いつく。晴れて「老人力」を発揮できるのだ。

しかしながら若い頃に思い描いていた60代の姿とは程遠いのも事実だ。重厚さが足りない。成熟した感が全くない。それなりの経験を積み、どの様な局面でも落ち着いた対応ができて当然な年齢であるが、いちいち初見のように戸惑いオロオロしている。いい年をして恥ずかしい。そう感じているのは私だけ・・・と不安になった時に三角読みしたのがこちら。

『老いの生きかた』 鶴見俊輔:編 ちくま文庫
限られた時間の中で、いかに充実した人生を過ごすかを探る十八篇の名文。来るべき日にむけて考えるヒントになるエッセイ集。

『神も仏もありませぬ』 佐野洋子 ちくま文庫
還暦・・・もう人生おりたかった。でも春のきざしの蕗の薹に感動する自分がいる。意味なく生きても人は幸せなのだ。

『駄目も目である 木山捷平小説集』 岡崎武志:編 ちくま文庫
知られた作家ではないかもしれないが、静かに愛されてきた理由がある。飄逸でユーモアに溢れる世界は唯一無二。岡崎武志が編んだオリジナル短篇集。

特に『駄目も目である』がおすすめ。著者の木山捷平(きやま・しょうへい)さんは、お隣の岡山県笠岡市ご出身(1904-68年)。ジャケ買いでもあるが、なにより書名に惹かれた。ちなみに今回の3冊とも「ちくま文庫」。ちくまだけじゃだめですか?

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