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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2025/06/23 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


ノンフィクション

このオムライスに、付加価値をつけてください

著者:柿内尚文

出版社:ポプラ社

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このオムライスに、付加価値をつけてください

長く同じ仕事をしていると、自分というものがわかってきます。
わかった、っていうかもう見切った…という感じ。
もちろん毎日がんばるのだけれど、日々の底にはうっすらとあきらめが。
そんな毎日だったのですが、最近ちょっと妙なことが起こっています。

10代、20代の頃は全く言われたことがないことを、たびたび言われるようになりました。

毎朝、定期購読やご予約のお客様でご希望の方に入荷のお電話をします。
そしてお受け取りにいらした時にわたしが会計をすると、ぱっと笑ってくれて『さっきは電話ありがとう』と。
他にも、
いつも電話ありがとう
あなたの声は元気が出る
話し方が素敵ね
とても聞きやすい声
など、声をほめていただけることがなんか多いんです。なんでだろう?子どもの頃からそんな声色に注目されたことなど全然なかったのですが…???
とにかく、仕事をしてお金を貰うばかりでなく、お客様に嬉しいことを言ってもらえて、なおかつ職場は大好きな本がいっぱいあって、毎日ご機嫌な日々です。
もしかして、わたしの付加価値って、こういうことなんだろうか。

声に自信がないどころか、小学生の頃は吃音が少しあり、そのためか場面緘黙症な感じがありました。教室で当てられてもしゃべらない。注目されると全く喋れなくなる。何時間も。教室の隅でずっと本を読んでいるおとなしい子。
今でもしゃべるのは本当に苦手です。
国語の教科書の音読を当てられた時、なんどもくりかえし読んだ大好きなお話だったので、なぜか最後まで発表できたことがありました。繰り返しもつっかえも出なかった。
それから、本を音読する練習を重ねて、まず、頭の中で文章を組み立ててから話すようになりました。こうするとわりとつっかえずに話すことができます。そのかわりちょっと喋り方がゆっくりなのですが。
苦手なので、なるべく練習しようと引き受けてきました。
絵本の読み聞かせ会や、FMおのみちさんの本の紹介など。
普通より下手なことをなんとか人並にしようとした試行錯誤や、繰り返しそうになって一拍置く間が、もしかして電話とかで聞き取りやすい喋り方になっているのでしょうか。いつの間に?

当たり前にあるものや、自分の思っている良い、悪い、それは一方から見た狭い一部分なのかもしれません。
わかってると思っている自分のことだって意外なことだらけです。
この本を読むと、職場や、家庭で、ぽわぽわぽわといろんな考えが浮かんできて楽しいです。
生活が、楽しくなる本です。

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