よもや50年前の作品が堂々ランクインするとは!
弊社の2025年上半期ベストランキング、文庫部門第１位は有吉佐和子先生の「青い壺」。
時代も価値観も大きく変わった現代で何故この物語が再び読者の心を捉えているのだろうか…。
それは、人間の本質を見つめるまなざしが色褪せていないからだろう。
そして令和の今、高度経済成長期の昭和の世相が新鮮に響き、なんともエモい。

　美しい一点物の青磁の壺を巡る13の連作短編集。様々な人の手に渡る青い壺を通して、市井の人々の悲喜こもごもが垣間見られる。

読者の年代や性別によって共感する話がわかれるかもしれない。
個人的には第12話の都会の大病院で清掃員として働くシメさんの話がグッとくる。
謹厳実直な働きぶりで家族思いのシメさん。
患者の見舞いの不要になった花をもらい、ポプリを作るのがささやかな楽しみだ。
身の丈にあった暮らし振り。
物の価値とは。幸せな生き方とは。考えさせられる。