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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2025/07/07 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

ロイヤルホストで夜まで語りたい

著者:青木さやか 朝井リョウ 朝比奈秋 稲田俊輔 上坂あゆ美 宇垣美里 織守きょうや 温又柔 古賀及子 高橋ユキ 似鳥鶏 能町みね子 平野紗季子 ブレイディみかこ 宮島未奈 村瀬秀信 柚木麻子     

出版社:朝日新聞出版

ショッピングサイト
ロイヤルホストで夜まで語りたい

これ、好きなんじゃない?と発売してすぐ文芸担当スタッフに教えてもらった一冊。
うわぁ、わたし好きそう…と思いながら、手に取らずにいました。
だって、ロイヤルホストに行ったことがないのだ…!!
なんだか、みんなが好きなロイヤルホスト。
あの漫画家も、小説家も、ミュージシャンも、芸人も、みんなが大好きな。
行ってみたい。でも近くにないなあ。先に読んじゃうのもなあ。
なんて考えていると、偶然!ロイヤルホストに行くことがあったのです。
この本を読みたいわたしが、無意識にロイヤルホストを引き寄せてしまったのだろうか…。読書欲ヤバいかもしれん。

15歳になる我が家の最年少。生まれて10年くらいは、本当にわたししか友達がいないって感じだった。仕事して、親をやって、さらに友達までやるのはなかなか大変だった。
いつまでもぴったりくっついていると思っていたのに、少しずつ、振り子がその揺れ幅を広げていくみたいにふぁーん、びゅあーん、と離れていく。そのたびに遠く。
先日、彼の用事で東京にまで行くことになった。物理的な距離まで遠くなってく。
まあひとりでは行けないのでわたしたち両親が付き添って。
子どもを会場に解き放って待つ5時間、遊びまくったけれど内心苦しくてしょうがなかった。きっとひとりで、傷ついて打ちのめされて帰ってくるに違いない。幼い頃小学校から帰って来る時いつもそうだったように。
暗くなる頃、迎えに行った彼は年上の子とおしゃべりしながらにこにこと…笑っている!
疲れておなかがぺこぺこのわたしたちは乗り換えの駅でてきとうに何か食べようと外に出た。
そこにあったのがロイヤルホストだった。

ちょっとお高いファミレス、くらいの認識しかなかったのですが、こんな…こんな場所だったの!?
入って少し絨毯の床を歩いただけで、そのゆったりとした優雅な空間に、さっきまでの人疲れが消え去ってしまいました。疲れすぎてコンビニおにぎりでもいいや、くらいの気持ちだったのに。
店内にいるお客さんみんなが、ゆったりと微笑んでいる。
オニオングラタンスープも、ステーキもサラダも、正しく良い食べ物だ、という気がしました。おいしい!はもちろんのこと。
迎えに行くまで、いろいろ想像してあんなに怖かったのに、現実の彼はすっかりリラックスして笑ってもりもり食事をしている。東京をすっかり気に入ってしまったようでした。不意な大きい音や、強い光や、慣れないにおいや、大勢の人があるのに。うちからこんなに離れた遠い場所、彼には耐えられないと思っていたのに。
振り子の揺れは、どんどん勢い良くなって、もうすぐすぽーん!と飛んで行ってしまうのかもしれない。チャレンジの後のロイヤルホストが、彼を強く押し出してくれたような気がします。
ここは特別な場所なんだ。わたしにとってもそうなった。すごく嬉しくて、ちょーっとだけ、さびしくなった思い出の場所です。

満を持して、この本を読みました。
さまざまな、その人だけのロイヤルホストに一緒にお邪魔して。
どうしてこんなに特別なのか。わからないけどすごくよくわかる。

もう、読み終わった後やってしまいますよ、ロイヤルホストのメニューをスマホで延々と見ています!デザートもいけば良かった!とか、パラダイストロピカルアイスティー飲めばよかった!とか、偶然ふらっと入ってしまったのが少し悔まれます。予習しておけば良かった…!!
行ったことがないからと尻込みせずに、先にこの本を読み、十分なイメトレを積んでから行くのもよかったかなと思います。
ロイホが大好きな方はもちろん、近くになく、行ったことがないという方へも強くおすすめします!!
読んだら行くしかないっしょ!!

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