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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2025/08/02 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
時をかける少女 〈新装版〉
著者:筒井康隆
出版社:KADOKAWA

映画「侍タイムスリッパー」(2024年8月公開・第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞)を観た。めっちゃ面白かった。え~今ごろ、遅っ!なんて思ってません?
ムムッ!いいんです!本も映画も出会ったときが最新作なのだから。
『幕末の侍があろうことか時代劇撮影所にタイムスリップ、「斬られ役」として第二の人生に奮闘する姿を描く。コメディでありながら人間ドラマ、そして手に汗握るチャンバラ活劇でもある』(公式サイトより)
原作は?ノベライズは?書店員としては気になるところ。コミックは予定されているが、小説はまだないらしい。
やはり夏と言えば「タイムスリップ」ものである。この季節には、そう感じさせる何かがある。だが、その理由を上手く説明できない。
なので謎を紐解くため「タイムリープ」や「タイムトラベル」と合わせてキーワード検索してみた。
浅田次郎『地下鉄にのって』、浅倉卓弥『君の名残を』、乾くるみ『リピート』、大江健三郎『二百年の子供』、恩田陸『ライオンハート』、垣谷美雨『リセット』、梶尾真治『つばき、時跳び』、北村薫『スキップ』、劇団ひとり『青天の霹靂』、汐見夏衛『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』
重松清『流星ワゴン』、筒井康隆『時をかける少女』、辻村深月『名前探しの放課後』、西澤保彦『七回死んだ男』、東野圭吾『ナミヤ雑貨店の奇跡』、広瀬正『マイナス・ゼロ』、宮部みゆき『蒲生邸事件』、山田太一『終りに見た街』、ロバート・A・ハインライン『夏への扉』
ジョージ・ガイプ『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、上田誠『サマータイムマシン・ブルース』、新海誠『君の名は。』、半村良『戦国自衛隊』、森本梢子『アシガール』、ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』、和久井健『東京卍リベンジャーズ』
まだまだ膨大な数の作品がある。このジャンルだけでフェアどころか専門店が一軒できそうである。
お勧め作品のなかでも筒井康隆『時をかける少女』を多くの方が推していた。調べると、もともとは学研の学年誌『中学三年コース』の1965年11月号から『高1コース』の1966年5月号に連載されていたそうである。驚くべきことに、もう60年前だ。もはや古典。
私が初めて『時をかける少女』を読んだのは、小学五年か六年生の頃ではなかろうか。だとすると雑誌掲載から7年、8年後の1973年か74年あたりで、まだ文庫ではなく単行本。また当時中学生だった兄のお下がり本?だった。
寝室の片隅で電気スタンドの明かりだけで読んだ。6歳下の妹がもう寝ていたからである。話の中に出てくるラベンダーってどんな香り?どんな花?と母親に小声で尋ねたりもした。
そんなことを思い出していると、何だか小学生の頃にタイムスリップした気分になる。そしてラベンダーではなく蚊取り線香の香りが・・・
考えれば小学生だったそのとき、本を読むという理由なら夜更かしが黙認されていたのだ。そして同時に思い出した蚊取り線香の匂い。そう、読んだのは夏休み中だった。だから私にとって夏と「タイムスリップ」がリンクしているのだ。
その曲を聴くと流行っていた当時のことを思い出す、ということがあるが、読書についても言えるのかもしれない。
『時をかける少女 〈新装版〉』 筒井康隆 角川文庫
放課後の実験室、壊れた試験管の液体からただよう甘い香り。このにおいを、わたしは知っている――思春期の少女が体験した不思議な世界と、あまく切ない想いを描く。時をこえて愛され続ける、永遠の物語!
思秋期のおじさんである私は、できうれば妻と出会う前に戻りたい…なんて思っていても口にはしない。
ムムッ!いいんです!想像するだけなら。