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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2025/09/17 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

第2図書係補佐

著者:又吉直樹

出版社:幻冬舎

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第2図書係補佐

朝は小鳥の声で目覚める。といえば優雅な感じがするが、オカメインコのキイちゃんとセキセイインコのクーちゃんが日の出とともに騒いでいるのだ。毎朝の日課として餌と水を取り替え、鳥かごを掃除する時は部屋の中に放鳥しているが、休みの日など夫婦二人して朝寝坊していると大きな声で「早く外に出せ!」と督促してくるのである。

「今日はお父さんが休みで家におるよ」と声をかけながら妻が鳥かごを開ける。私は彼女を名前で呼んでいるが、妻は私をお父さんと呼ぶ。当たり前だが私は彼女の父親ではない、ましてやオカメインコの父親でもない。だが「お父さん」と呼ばれるとそんな気になってくるのが不思議だ。

キイちゃんが飛んできては頭をペコリと下げる。「撫でて」という合図だ。人差し指で首の周りをカキカキ、オカメインコの由来であるオレンジのほっぺをナデナデする。ちなみに、あのオレンジのところは耳である。撫で方が悪いと急に噛みついてくる。突然キレるとこなんか妻に似てきたなぁ…そんなとこも可愛く感じる今日この頃。

少し前だが、寝ぼけ眼でキイちゃんをナデナデしていたら妻から「『あさイチ』で読書の特集をしとったから録画したよ」と言われて見ることにした。NHK「あさイチ」で紹介された本は確かによくお問い合わせを受ける。もちろん知っておくべきだ。

上白石萌音さんが書店を訪れ『本が読めない33歳が国語の教科書を読む』かまど, みくのしん/大和書房、『さみしくてごめん』永井玲衣/大和書房、『ババヤガの夜』王谷晶/河出書房新社、また『ギリシャ語の時間』ハン・ガン 斎藤真理子/晶文社を紹介されていた。

番組内ではスマホやパソコンを利用して24時間借りられる電子図書館サービスや「聴く読書」オーディオブックも紹介されていた。読書のスタイルが色々あって良いとは思うが、書店員としては店頭で実際に手にしながら選び、本棚にお迎えして欲しいものである。偶然目にした1冊が生涯そばにいてくれる友になるかもしれない。

私も何か紹介しなければと、わが家の本棚から本を紹介している本を抜き出してみた。

『ホンの本音』群ようこ/角川文庫、『ぼくの宝物絵本』穂村弘/河出文庫、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子/河出文庫、『第2図書係補佐』又吉直樹/幻冬舎よしもと文庫、『こころの読書教室』河合隼雄/新潮文庫、『鞄に本だけつめこんで』群ようこ/新潮文庫

『増補版 ぐっとくる題名』ブルボン小林/中公文庫、『新編 散文の基本』阿部昭/中公文庫、『装丁問答』長友啓典/朝日新書、『名作時代小説100選』杉江松恋・編/アスキー新書、『人生の1冊の絵本』柳田邦男/岩波新書、『読まされ図書室』小林聡美/宝島社

『わたしのなつかしい一冊』池澤夏樹・編/毎日新聞社、『ひきこもり図書館』頭木弘樹・編/毎日新聞社、『THE BOOKS green 365人の本屋さんが中高生にこころから推す「この一冊」』ミシマ社・編/ミシマ社

例によってそれぞれ手にしてはパラパラと頁をめくっていた。そういえば「あさイチ」で上白石萌音さんが訪れた書店はどこだろう?と思いネットで調べると『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』の花田菜々子さんの「蟹ブックス」(東京・高円寺、2022年9月1日オープン)と知る。素敵な書店だった。ぜひ行ってみたい。

『THE BOOKS green 365人の本屋さんが中高生にこころから推す「この一冊」』は全国365店舗の365人の書店員がおすすめ本を紹介されている。なかには残念ながら既に新刊書店では手に入らない本もある。
本は商品である。出版する側も購入する方も様々な事情と制約がある。本書も含め、読みたいと感じた本は、出来るだけその時に買っておいたほうがいい。ちなみに『THE BOOKS green 』の6月8日(NO.159)は、われらが啓文社岡山本店のマルちゃんが登場している。お手元に本書をお持ちの方は今一度ご確認を。

『第2図書係補佐』又吉直樹/幻冬舎よしもと文庫の「はじめに」は、こう書かれている。

僕の役割は本の解説や批評ではありません。僕にそんな能力はありません。心血注いで書かれた作家様や、その作品に対して命を懸け心中覚悟で批評する書評家の皆様にも失礼だと思います。
だから、僕は自分の生活の傍らに常に本という存在があることを書こうと思いました。本を読んだから思い出せたこと。本を読んだから思い付いたこと。本を読んだから救われたこと。
もう何年も本に助けられてばかりの僕ですが、本書で紹介させていただいた本に皆様が興味を持っていただけたら幸いです。

時々読み返す。このコラムを書く時の気持ちと一緒だといつも思う。

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