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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
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本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2025/09/25 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
台湾はおばちゃんで回ってる?!
著者:近藤弥生子
出版社:大和書房

息子が台湾から帰国した。一人だった。何故あえてそんなことを言うのか。思い返せば約8年前、娘が帰国した時は台湾男子と一緒だったからだ。その彼が娘のパートナーになるのだが、あの時はとても驚いた。朝ドラ「あんぱん」風に言えば「たまるか!」である。
幼い頃から娘には「可愛いね」と言い続けた。彼女が大人になった時のことを考えてのことだ。変な下心がある男性から甘い言葉をかけられフラフラとついて行かぬよう、騙されないようにと免疫をつけさせたのだ。
その甲斐あって年頃になると「可愛いね!」と言われても「知ってる~」と何のてらいもなく当然ですと返していた。私の思惑通り勘違い女子になったのだ。これなら大丈夫だろうと外に出したところ、蓼食う虫も好き好きというのか台湾男子が「オトーサン、ハジメマシテ~」と挨拶にやって来たのである。
私は日本語しかできない。そうか、台湾男子は中国語で娘に言い寄ったに違いない。そこまでは考えが及ばなかった。こんなことなら大学生の時、第二外国語で中国語を選択しておくべきだった。同級生のS君に誘われたが、難しそうだったので履修しなかったのだ。いま頃になって悔やんでもしかたがない。またまた朝ドラ風に言えば、「たっすいが」である。
でも娘は10年の台湾生活で「はちきん」(男勝りの元気な女性、もちろん朝ドラより)となり、台湾男子を尻に敷いて仲良く暮らしている。まぁ結果オーライだ。
『台湾はおばちゃんで回ってる?!』近藤弥生子 読んで旅する よんたび文庫/大和書房
スルー能力が高くてストレートな物言い。多様性に富んでいて同調圧力がない。食を大切にし、困ったらみんなで助け合う。そして社会を動かしているのはおばちゃんだ!
そんな台湾でシングルマザーとして6年働き、台湾人と子連れ再婚・出産をした著者は、日本で身につけていた「呪縛」からいつしか解き放たれていたことに気づいたのだった。
台湾式の産後ケアや子育て、仕事観や市民活動などにもふれながら、「細かいことを気にせずやりながら考えよう」、そんなふうに思わせてくれる台湾での暮らしを綴ったエッセイ。
力強く「自分軸」で生きる台湾のおばちゃんについて娘に真偽の程を聞いてみた。良くも悪くも大体ざっくり、迷惑をかけることにひるんだりしない、悪気なくストレートな物言い、遠慮なく買い物を頼むなど「そうそう!」「あるある!」とのことだった。
正直言ってグイグイくるタイプの人が苦手なので台湾での生活は私には無理だが、そんなにイケイケなのに「一人ひとりのニーズは異なるもの」と、自分にとっての「当たり前」を押しつけたりはしない。同調圧力もないという。
他の人の意見、多様性を尊重しながらもおせっかいな人々…いや、おせっかいと言うより面倒見がいいというべきだろう。
日本では周りに合わせる協調性を身につけないと生きてはいけない。だが他の人と同じでないと必要以上に不安を感じたり、控えめなことをとりあえず良しとしている。でもそのことでストレスも感じている。
もちろん全てを見習うべきだと言いたいのではない。でもパワフルで人情深くて健康的。人目を気にせずわが道を行く「台湾のおばちゃん」的な思考が必要だと感じる。興味を持たれた方はぜひご一読を。
ちなみに娘が嫁いでいなくなったので、今では妻に「可愛いね」と言っている。姉さん女房殿は冗談とは受け取らず、まんざらでもないようで機嫌よく暮らしている。
これまた朝ドラ風だが、こんな私の一言でも「こじゃんと」役に立つのである。