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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2025/11/07 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

彼の左手は蛇

著者:中村文則

出版社:河出書房新社

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彼の左手は蛇

男は、この間違った世界を正そうとしている。
左手の蛇と共に。

男が進むごとにその孤独が大きく、こちらを飲んでしまいそうに思う。
この世界の恐ろしさグロテスクさにどんどん冷えてゆく。けれど目が離せない。彼の進む先に。
恐ろしくおぞましく美しい、蛇に目を奪われるようです。

動物園では真っ先に爬虫類館に行き蛇を眺めるのが好きです。分厚いアクリル板に隔てられているから、安全に蛇の恐ろしさを、ぞわぞわする身の毛を楽しんでいられる。

この小説に描かれた世界の恐ろしさ、苦しさを、額を寄せて覗き込んでいたら、アクリル板のないのに気付いてしまった。息を細く吐きながら最後までなんとかたどり着きました。

読み終わって、無性に最初から「彼」を知りたくなり読み返しています。
この本の中にわたしの欲しかった言葉があるんじゃないか、隅々まで読み返してひとつずつ見つけていきたいです。




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