おすすめの本RECOMMEND
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2026/06/21 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
小さいコトが気になります
著者:益田ミリ
出版社:筑摩書房
娘夫婦が台湾から帰って来た。といっても実家であるわが家にではなく、東京観光をするための帰国である。
台湾で日本語の家庭教師をしている彼女は、生徒さんから富士山に登ったことがあるか?東京ディズニーランドには何度行ったか?などと聞かれるらしい。
台湾の人々は日本が大好きなので、頻繁に訪れては観光地巡りをされている。そのため「えっ、一度も行ったことがないのですか!日本人なのに」と驚かれるらしい。
そんなわけで彼女は日本国内旅行の経験値を上げるため、「実家には立ち寄らない」パターンの帰国をすることがある。
で、今回は東京。娘は「私に会いたかったら日程を合わせて東京においで~」と言う。
上から目線の言い方が気になったが、「望むところだ」と伝えると二泊三日の旅程表がLINEで届いた。三鷹の森ジブリ美術館、25周年の東京ディズニーシー、築地、浅草、スカイツリー、かっぱ橋と書かれていた。
私の職場である書店もそうだが、行く先々の観光地も繁忙期であるGW期間中は外し、5月末の平日に有給休暇をもらった。
いざ行かん!花の都、東京へ!!
往復の新幹線は息子がネット予約してくれた。ICOCAの裏側に記載されている番号を教えると手続きをしてくれ、「これさえあれば乗れるよ」という。昭和な私たち夫婦は、「みどりの窓口」に並びチケットを購入するものだと思っていた。
当日「ホンマに大丈夫か?」とドキドキしながら改札でピッとするとすんなり通れた。そればかりか座席表がスッと出てきた。便利になったものだ。今の世の中、元気とICOCAがあれば何でもできるのである。
朝バタバタしながら妻がリュックに入れたのは、食パン2枚とトマト3個。このチョイス、何ともわが家らしい。早朝の新幹線でテンション高め、かつイチャつきながらトマトを丸かじりしていた中年の、もとい初老のカップルは私たちです。
日頃の行いが良いので富士山をバッチリ見ることができた。少し迷ったが八重洲北口で娘夫婦とも合流できた。早速お土産の「東京ばな奈」を買いたがる妻を制し、ホテルに荷物を預けて吉祥寺に向かう。「四歩(しっぽ)」というお店でランチをするらしい。とにかく人が多い。初めて上京された人が「今日はお祭りか?」という気持ちがよくわかる。
お昼時で店内は混んでいた。周りは女性ばかりだ。お隣の雑貨屋さんでしばらく待っていると、私たち夫婦と娘夫婦が別々の席で良ければと案内してくれた。その様子を見ていた既に食事をされていたお客さんが、「席をかわりましょうか?」と自発的に移動してくれた。東京の人はクールだと思っていたが、なんて親切なのだ。考えれば、その方々も私たちと同じ旅行者かも知れないが、とにかく人に優しいお店は繁盛するものだ。まさに「ヨキミセサカエル」である。
東京は人も多いが緑も多い。大都会の中に森があるなんて…と驚きながら歩いていると目の前にジブリ美術館。こちらの予約は娘がしてくれている。新幹線もジブリ美術館も東京ディズニーシーも、宿泊ホテルに至るまで全て子どもたちがネットで手配してくれた。まさに「おんぶにだっこ」である。
ちなみに息子は赤ちゃんの頃、私に抱っこされるのをひどく嫌がった。お母さん大好きっ子だったのだ。身をよじって泣き叫びながら私から逃れようとする。一瞬、落としそうになりヒヤリとして「お父さんで我慢しなさい!」とキレたことも一度や二度ではない。
『山脇百合子の仕事部屋』展やジブリ・オリジナル短編アニメーション「たからさがし」を鑑賞して、赤ん坊になんて悪態をついていたのだ、もっと言い方があったろうにと今更ながら反省した。
東京ディズニーシーではあらたに2組のご夫婦がメンバーに加わった。娘は帰国に際し、友人夫婦も東京観光に誘っていたのだ。娘の友だちなので顔見知りだ。台湾での娘の結婚式にも出席してくれている。わが家にお泊りしたこともある彼女たちは、私のことを「お父さん」と呼んで親しくしてくれている。娘がいる男親ならではの特権だ。
ただ彼女らのパートナーのうち一人の男性は、私のことを苗字で呼んでいた。Mrs. GREEN APPLEのメンバーの誰かに似ているイケメン君だ。彼に限って言えば、会ったのは過去一度だけ。なので仕方がない。でも彼からも親しげにお父さんと呼ばれたい。
「ソアリン」で空の旅を楽しみ、「センター・オブ・ジ・アース」で大人げなく絶叫し、「タートル・トーク」ではいい声のウミガメから質問されてイジられたらどうしょう、とちょっぴり怯えながらも、常に頭の片隅にはお父さんと呼ばれたい願望が渦巻いていた。
翌日、築地では海鮮丼を堪能した。もしやこれは、お父さんらしいところを見せるチャンスではないか。いわゆる「ゴチ」である。そうすれば「ごちそうさまです。お父さん」の声が聞けるはず。
反応が気になりイケメン君をチラ見する。もうお父さんって呼んでくれるよね。ほら恥ずかしくないから…
「小さいコトが気になります」 益田ミリ ちくま文庫
「これ、確認のために食べておこう」「近頃話題のあれを確認しておこう」…大好きだからというよりは、なんとなく気になる、なぜか気になる小さなコトたち。ひょっとしたらおいしいかもしれない、もしかしたらおもしろいかもしれない、「あるある」という共感を呼んだり、ほのぼのとした気持ちになったり、微妙な気分を描いて人気の著者の日常を、エッセイとイラスト、漫画でづづる。
もちろん書店巡りをした。「BOOKSルーエ」、「MAIN TENT」、「百年」、「八重洲ブックセンター ルミネ荻窪店」、「本屋 Title」、本書はその時に購入させて頂いたうちの1冊である。
いずれのお店も駅から歩いて行ける。みんな東京に住みたくなるわけだ、と感じた。
