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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2026/10/16 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

ジジイの台所

著者:沢野ひとし

出版社:集英社

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ジジイの台所

妻は私をジジイ呼ばわりする。「ジジイお腹が出てきたな」、「ジジイは風呂入って早く寝ろ」など、何かにつけてはジジイ、ジジイとうるさい。

失礼な話である。私の方が彼女よりずいぶん若いのだ。
今から17年も前になるが、当コラムの第5回目(2009/04/20 更新)、高橋留美子さんの『めぞん一刻』をご紹介したとき、私たち夫婦の年齢差についてこのように書いた。

遡って考えれば、私が半ズボンにランドセルで仮面ライダーに憧れる小学生だった時、彼女は家庭教師の医大生に憧れる高校生でしたので、その差を感じるのは無理もありません。しかし「主人とは高校の同級生なんですぅ~」と説明し、ごまかしながらも強引に押し通そうとする彼女には少し無理があります。
「いやいや、学校で見かけたこともないし…」と心の中でツッコミはいれても、彼女を止める勇気はありません。無言で佇んでいる私に向かって「そうよね~」と笑顔で振り向く彼女は、目が笑っていないから・・・

我ながら上手く書けたと思っていたが、妻は面白くなかったようだ。いまだ根に持っているのだ。

彼女からの度重なるジジイにたまりかね「僕がジジイなら、あんたはバ〇〇」(伏字は自主規制)と言い返すことがある。
妻は例の笑っていない目で、「ジジイ調子にのんなよ」と、やっと痛みが治まった腰に蹴りを入れる素振りをみせる。

「美人は怒ると怖いなぁ」、歯が浮くようなセリフで慌ててご機嫌をとる。
家での私はチャラい。チャラじいである。

俳優・桃井かおりさんの名言に「30過ぎたらみな同い年」というのがある。私たち夫婦はお互い還暦過ぎなので、もはや年齢差などあってないようなものだが、そうすると30歳を過ぎた娘も息子も同い年ということになる。
実際には同い年というより、子どもたちの方が随分しっかりした大人で、彼らから教わること、助けられることは多い。

例えばこの夏、腰痛で臥せっている時、台湾でワーホリ中の息子が心配して急遽帰国してくれた。妻が所用で家にいない時など、彼が炊事、洗濯、掃除と身のまわりの世話を焼いてくれ、病院の送り迎えもしてくれた。
男同士なので妻より頼みやすいこともあり、大いに助けられた。

思い返せば彼が幼い頃、キングという呼び名が付いたムシとか恐竜とかのカードが流行っていて、店先の販売機(お金を入れて回すと出てくるガシャポンみたいな)を見かける度に欲しいとねだっていた。
いつも妻は1回だけと制限を付けていた。だが息子にいい顔をしたい私は、二人だけのときに所持金の許す限り何回でもさせてあげた。
いま思えば長男である彼には、「いくらでも買ってあげるから老後の面倒はみてネ」と願う気持ちがどこかにあったのだ。

幼稚園児だった息子は大層喜び、「うちは、お母さんよりもお父さんの方がいい人なんよ~」と誰彼となく吹聴して回るようなった。
もちろん妻から叱られた。「子どもをモノで釣るんじゃない!」と。
彼女は目が笑っていないどころか、鬼〇〇(自主規制です)のような形相だった。

『ジジイの台所』 沢野ひとし 集英社文庫

「おいしいものが生まれる場所には、いつも笑顔がある」
台所には、様々な調理器具や食材のほか、家族との思い出も詰まっています。食欲を刺激させられるレシピから、しんみりとした気持ちになる母や兄の想い出話。知的好奇心をくすぐられる外国の台所の話まで、料理好き以外も楽しめる盛りだくさんな内容。片づけのコツや道具の豆知識など、コラムも充実。読めば力が湧いてくるイラストエッセイ。

具体的な料理法やレシピはもちろんだが、父母や兄姉との思い出、娘さんやお孫さんとのエピソードが良かった。また、私のような「ひよっこ」ジジイにとって金言、格言がそこかしこにある。

ジジイにとって、台所は唯一の足が地についた生活の場であり、安らぎの場でもあり、心のよりどころになる。
ジジイにとって「いつか」はない。その日その日を真剣勝負で生きるために、必死になって料理を口にしている。
気持ちに張りがなく、気分がふさいでいる時も、自分で淹れた一杯のコーヒーでジジイは元気になれる。

料理でなくてもいいのです。ジジイの皆さん。まずは啓文社オリジナルの読書専用珈琲、ご自身で淹れてみませんか。

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