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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2026/10/24 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

マイマップ MY MAP

著者:杉山 健太郎

出版社:朝日新聞出版

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マイマップ MY MAP

「あるきはじめた みいちゃんが 赤い鼻緒の じょじょはいて おんもへ出たいと…♪」
童謡「春よ来い」のみいちゃんの気持ちが、今はよくわかる。腰痛も治まり、一人で出歩けるようになったことが嬉しいのである。季節は秋に向かっているが、気分は春。

先日、福山駅まで歩いてみた。もう一年以上前になるが、東広島市にある西条店に勤務していたとき駅まで何度も歩いている。自宅から30分ぐらいかかることも承知している。今も歩けるかどうか腕試し、というか足試しである。

以前と同じく30分ぐらいかかったが無事に着いた。すると自然と足が改札に向かう。頭ではなく体が覚えているのだ。
定期券はないがICOCAは所持している。休日なので、このまま西条まで行ってしまおう。下り線のホームに立ち、やって来た電車に乗り込んだ。

だがその日、西条は「酒まつり」初日だった。毎年この日は観光客が電車で移動する。もちろんお酒を飲むためだ。なので車内はすし詰め状態。結局、乗り換えの糸崎駅まで座れない。30分歩いた後の30分立ちっぱなし。そして糸崎駅では、次こそ座りたいがため、皆さん向かいのホームに停まっている乗り換え電車まで猛ダッシュ。部活か…

少し出遅れたが、何とか座れてホッとしていると有吉佐和子さんの『青い壺』(文春文庫)にこの様な話があったと思い出した。

定年退職した男性が、半年ぶりに以前勤務していた会社に行く。お世話になった副社長に改めてお礼の品(青磁の壺)を渡すためである。挨拶が済み役員室を出た彼は、勤務していたときの部署である庶務課に立ち寄る。
彼の後任の男性は、入れ違いで庶務課の部屋を出ていた。そのため席が空いており、何気に彼は座る。あまりにも自然なので周囲の誰も気づかない。彼は目の前の伝票を引き寄せ無意識に判を押し始める。

そこで初めて彼の存在に気づいた周りの社員は、唖然となり声も出ない。半年前に退社したはずの男が席につき判を押している・・・やがて現在のその席の主である男性が戻ってくる。退職したとはいえ先輩である彼を見て「どいてくれ」と言う勇気はない。
「もう少し様子を見よう」椅子をとられた男性は言う。「僕らもいずれ、あんなことになるのかねえ…」

私の年齢だと笑うに笑えない話である。何とも切ない。
もし私が西条店の事務所に入り、何気に店長席に座っていたらスタッフの皆さんはどのような反応をするのだろうか。
それより何より、前任店長である私を覚えてくれているのだろうか。「どちら様?」って言われたりして…

少し心配だったが、実際には皆さんにこやかに迎えてくれた。忘れられてはいなかったのだ。ありがたいことである。
そのお礼という訳ではないが、西条店にて本を2冊購入した。前回ご紹介した『ジジイの台所』(沢野ひとし/集英社文庫)、そして本書である。

『マイマップ MY MAP』 杉山 健太郎 ブックデザイン 朝日新聞出版(朝日文庫)

地図に、人生の足あとを書き込もう。あの旅も、あの味も、あの街も、学校も、あの出会いも……。地図におさまりきらない人生を、この一冊に。日本全国、47都道府県・主要都市・東京23区など収録。

簡単に言えば文庫サイズの地図帳。白地図という方が近いかもしれない。自分で書き込めるのである。過去に訪れたところのみならず、これから行きたい観光地、温泉、飲食店、美術館、もちろん書店も。
ペンの色を変えてもいい。過去に行ったことがある場所は黒、これから行きたいところは緑とか。記念のシールや入場券を貼るのもあり。
また鉄道が好きな人なら、こんな路線があったらいいな、という空想や妄想だって書き込める。自分の思う通り、自由に使える地図である。
さて、今度はどこに行きますか。お楽しみはこれからだ。

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