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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2007/09/22 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

優雅な生活が最高の復讐である

著者:カルヴィン・トムキンズ

出版社:新潮社

優雅な生活が最高の復讐である

この本は小説ではありませんが、何度も読んでしまうもののひとつです。
ジェラルドとセーラの、マーフィ夫婦へのインタビューを基に作られたこの本は、全て事実でありながら、ひとつの物語になっています。
二人がどんな風に出会い、夫婦になり、どんな風に考え、行動し、自分たちの思いを表現したか。その時代毎に、二人の気持ちが丁寧に語られていきます。
有名で、大きな才能や魅力を持った人たち。彼らの人生は、名も無い、何の特別なものも持たないわたしたちの人生となんら違う訳ではないのだ。という事に気付かされ、目の覚めるような気になります。理想や目標へ向かって順調に漕ぎ出したかのように見えた舟も、波や嵐に行く手を阻まれたり、思いもよらない場所へ流されてしまったりするのです。
マーフィ夫婦の友人たち、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ピカソ、レジェ、コール・ポーターなど、さまざまな偉大な才能を持った人たちが、惹かれあい、楽しんだり、互いに良い影響を受けたり、逆に反発し合ったり、けんかをしたり、理解し合えないと思ったり・・・。
天才と呼ばれる人たちが、実際に生きて生活していたのを知ると、わたしたちと変わらない心が見えてどきどきします。
人はみんなひとりひとり特別で、同時に大きな運命の流れの前には無に等しい存在だという事。
戦っても戦っても、負けまくる時もあります。そのまま一生勝てない事もあるかもしれません。でも、そんな時に悲しみや虚しさを抱えながらも、優雅に微笑む事ができた人たちがいます。かっこ良すぎて、しびれまくりです。とても、お手本にしようとも思えないくらいです。

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