おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2008/02/09 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
遺失物管理所
著者:ジークフリート・レンツ
出版社:新潮社
先日、図書館に行った時の事です。
手に取った本の中に、手紙が2通挟み込まれていました。しっかりと封がしてあって、宛先も、差出人の名前も書いてあります。切手も貼ってあり、すぐにでもポストへ投函できる状態です。
本の間から封筒がすべり落ちてきた時、びっくりしてしばらく考え込んでしまいました。この手紙を書いた人は、一体どうして忘れてしまったんだろう。書き終えた手紙を本に挟み込んだまま図書館に返却してしまったのでしょうか。でもこんな厚い手紙(80円切手では不足なのでは?と思うくらい重かった)司書の方が見つけそうなものです。では、ここで読んでいて忘れた?2通も本に挟み込んで?
もしかしたら、忘れたのではなくて、置いていったのかもしれない。この図書館の中に。誰かが本を開いて見つける事を期待して。この手紙は、いつからここにあったんだろう。そんな事をいろいろ想像してわたしはすっかり楽しい気分になってしまいました。そして、前に読もうと思っていた本の事を思い出して、それを借りて家に帰りました。
遺失物管理所で働くヘンリーの元にも、さまざまな忘れ物が現れます。
いつでも取り替えがきく、と思っていたのに、失くしてみて初めて、その大切さに気付くもの。失くしたものを必死で捜す人。わざとものを置き去りにしていく人。忘れ物がきっかけで出会う人たち。
図書館で見つけた、少し変わった忘れ物のお陰で、この本の事を思い出せて、良かったです。
さて、最後に問題です。わたしは発見した2通の手紙を、どうしたでしょう?
① 封を開けて、読んでしまった。
(遺失物管理所では持ち主を特定するために許されていました。)
② 代わりにポストに投函した。
(貼ってある切手は未使用でした。)
③ そのまま、図書館司書に預けた。
(一番、非冒険的な答え)
答えは、また今度・・・。