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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2009/05/31 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

1Q84 BOOK 1,BOOK 2

著者:村上春樹

出版社:新潮社

1Q84 BOOK 1,BOOK 2

 前回の長編「海辺のカフカ」が発売になったのは2002年の秋でした。そんなにも長い間待っていた事に気がつきませんでした。星野くんやナカタさんが出てくるところは何度読んでも楽しくて、気が付けば何年も経っていた感じがします。

 村上春樹の小説にはいつもわけのわからない謎のものがごろごろ出てきます。今回の小説にももちろんそれはありました。いつもはその謎を「これは何なんだろう?」と、頭が痛くなるまで考えてみたり、無理に飲み込んで消化不良を起こしたりするのですが、この小説は特に胸につかえることなく、するするとわたしの心になじんでゆきました。
 今までの作品を読んだ時のような強い苦しみや悲しみを感じることもありません。逆に、わたしの中にあったもやもやしたものをすっかり持って行かれたような気がします。今までの作品と比べて軽い読み応えだったというのではなくて、今のわたしにちょうどいい、違和感なく寄り添える物語だったんだな、と思います。
 そう感じる理由のひとつに、わたしがだんだん村上春樹作品の主人公の年齢に近づいて来ている、というのがあります。15歳の頃に読み始めて今まではずっと年上の主人公だったし、前回のカフカ君は15歳で、その心の動きの繊細さに読んでいてへとへとになってしまったし。
 年を取るのは、こういう良いことがたくさんありますね。再読するとまた新しい発見ができそうな本が、まだまだいっぱい本棚に控えているので楽しみです。でもしばらくの間は「1Q84」を読み返して過ごす予定です。何度も何度も、何年でも。そうしているうちに村上春樹の次の新刊が出ないかな~♪と、期待して。

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