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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2009/07/29 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

モノレールねこ

著者:加納朋子

出版社:文藝春秋(文春文庫)

定価:530円

モノレールねこ

 小説の中の世界というのは不思議なもので、今日わたしはザリガニの物語に涙してしまいました。現実の日々で、今までザリガニについて個人的な感情を抱いた事があっただろうか・・・?
 ザリガニのバルタンの活躍に感動して、わたしももし生まれ変わる事があったらバルタンのようなザリガニになるんだ!と、夏の太陽に誓うほどの盛り上がりっぷりです。・・・読み終えてしばらく経つと、ザリガニ・・・ザリガニって田んぼや沼でガシャガシャうじゃうじゃいるやつらだよなあ、とやっと我に還りました。できればさっきの誓いを撤回したいのですが。やっぱり生まれ変わる時はお金持ちの美人姉妹に飼われる猫になりたいのですが。(夫が以前よく言っていました)お金持ちでもなく美人かどうかもノーコメントな姉妹に飼われていた実家の猫は、幸せいっぱい♪って顔はしていませんが。


 魔法の世界の物語なら、空を飛ぶこともできます。
 SFの世界の物語なら、時を超えることもできます。
 でも、なんでもありの無秩序な世界ではつまらない。ルールがあって、その制約を受けて動く物語は、自分がその中に入り込んだ時にできること、できないことがあって、その中でどうしたらいいかを考えを巡らす面白さがあります。読書の醍醐味のひとつだと思います。


 こんな風に書くといったいどんな物語なんだろう、と思われてしまいそうですが「モノレールねこ」はミステリーの短編集です。短編ひとつ毎に休憩が挟めるので、暑くて集中できない夏の読書にはぴったりです。

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