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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2010/01/21 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

熊の場所

著者:舞城王太郎

出版社:講談社(文庫)

熊の場所

 以前は、好きになった作家の作品は片っ端から読み尽してしまっていたのですが、最近は即、全制覇する事はしません。

 秋のリスが森にどんぐりを埋めて回るように、読んでしまいたくてもぐっと我慢してとってある本がたくさん。
 全部読んでしまったら、残りの日々を渇望と共に生きる事になってしまいます。あ~、読みたい読みたい!!同時代の作家なら新刊をじりじり待つ事もできますが、そうでない作家の時には、もう読めないなんて!!と、ますますじたばたしてしまうので。

 まだまだ、読む本はいっぱいある♪と、あまり大事にし過ぎて、どこに埋めたか分からなくなる事も多いですが・・・。今回もとっておいて読んでないのをすっかり忘れたいたものです。
 芽がでる前に掘り出せてよかった。

 わたしの 熊の場所 はどこだろう。
 子供の頃、恐怖はそこら中にあって、今と違ってそこから逃げるやり方を知らなかったのを思い出しました。
 周りの大人が思うよりも子供たちは危険や不安に晒されていて、でも誰も大人に解決を求めたりはしなかった。子供たちの世界のなかで恐怖と向かい合うしかなかった事を、肌で感じるようにクリアに思い出す本です。

 大人の強さとは、鈍くなる事、見ないふりができる事、卑怯になる事。
 うまく恐怖から逃げて立ち回る事ができるようになって、大人になれた、と思っていたわたしのこころが一気に透き通った脆いものに引き戻されてしまいました。

 大事にとっておいて、よかった。
 またいつか読もう。

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