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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2010/01/30 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

僕僕先生

著者:仁木英之

出版社:新潮社

僕僕先生

 最初のうちは、主人公の父親に大変同情しながら読んでしまいました。
 二十二歳にもなるのに一日中なんにもせずに暮らすニートの王弁くん。子供の頃は利発であったためお父さんはなかな彼を諦めることができません。
 毎日ガミガミとお説教されるものの、それをのらりくらりとかわす王弁くん。な、情けないぞ!
 そんな彼が仙人の僕僕先生と出会って少しずつ変わってゆきます。
 変わってゆく、と書きましたが少し違います。今までせき止められていたものがまた流れ出すように、元々彼の持っていた一面が表れたのだと思います。
 父親が導こうとしていた方向は、彼にとって自然な流れではなかっただけなんだな、と納得しました。なんだ、お父さんの思う通りにならないだけでだめな子じゃないんじゃん、王弁くん。

 今のわたしは毎日家でごろごろごろごろごろごろ・・・している身なので、王弁くんの力の抜けた、でも時々情熱的な楽しい冒険が、読んでいてとても心地良かったです。
 あんまりにも勤勉で努力と根性の主人公の物語だと、読んでいて申し訳ない気持ちになってしまいます・・・。

 夜が明けて、日が沈む。そのあいだ空がゆっくりと表情を変えてゆくのをただ眺めているような、のんびり気持ちの良くなる小説でした。
 
 

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