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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2010/10/23 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

私の家では何も起こらない

著者:恩田陸

出版社:メディアファクトリー

私の家では何も起こらない

 映画などの映像ホラーは笑って観れるのですが、文章になった怪談話はとても怖い。
 夜に読書なんてとんでもない。昼間に明るい部屋の中で読んでいてもカーテンをゆらす風や、蛇口から落ちる水滴の音にびくびくしてしまいます。
 それでもどうしても読みたくなってしまうから不思議です。しかたがないので人の沢山いる午後の公園で日向ぼっこをしながら少しづつ読むことにしました。九つの幽霊譚と附記のサイドストーリーが収録されているので、だいたい一日一幽霊のペースで読み進めていました。
 子ども達の笑い声や、小鳥のさえずりで恐怖がかなり緩和され、これはいい読書場所だな、と思っていたのですが。
 ある日、つい夢中になってしまい最後まで読み終えてしまいました。文字が読みにくくなったのに気付いてふとページから顔を上げると、明るかった公園には空からうすむらさき色の闇が降り始め、いつの間にか黄昏、逢魔が刻に・・・。
 人通りもわずかになった公園を、闇に溶けかけた人影を見てはびくびく、手招きするように揺れる柳の枝を視界に入れないようにおもいっきりうつむきながら、猛スピードで母は、ベビーカーを押して逃げかえりました。今思うとかなりの不審者っぷりですね。

 丘の上に立つ、美しい素敵な幽霊屋敷。暮らしてみたい魅力的なお家ですが幽霊がうじゃうじゃいるのはちょっと・・・。
 あ、でも自分も幽霊になってしまえば仲間に入れてもらって楽しく暮らせるかもしれません。新しく来る人間を脅かして遊んだりして。
 あと半世紀ほど先の未来に、暮らしてみたい物件を見つけました。
 
 

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