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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2010/12/20 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

ねむり

著者:村上春樹

出版社:新潮社

ねむり

 この本は、短編集『TVピープル』に収録されていた『眠り』がイラストレーションが新しく付いてドイツで発売になったものです。村上春樹による文章のヴァージョンアップがなされています。

 夫に、「『眠り』って主人公がドストエフスキーの『アンナ・カレーニナ』を読む話だったよね?」と問うと、
「そうだっけ?主人公が水泳をする話じゃなかった?」と返ってきたのでしばしにらみ合いになったのですが、本を開いてみると、主人公は『アンナ・カレーニナ』をよみ、プールに行って泳いでいました。あれ?両方していたよ~。
 お互い印象に残っている所が違っていたので別の小説みたいになっていました。あれあれ・・・。

 文章を読んで、自分ひとりでイメージをふくらませるのと、イラストレーションと文章が混ざり合って思い起こされるものとは、映像がかなり違ってくるので面白いです。
 脚本が同じなのに、キャストや舞台背景が全く違うものを観ているような。
 「TVピープル」に収録されたものと、この改稿板とを読み比べてみたいです。実家にあるのかなぁ・・・探さなくちゃ!

 昔読んだものを読み返すと、いつも違う感想が得られるので得した気分になれます。
 主人公の女の人は、すごく大人の女なイメージだったのに、今ではわたしと同い年!!外で働かず、家事と夫と息子の世話をしているところも一致しています。
 大きく違うのは、主人公は体型を維持するために水泳をして努力しているというのに、わたしときたら妊娠を言い訳に18.5kgもウェイトを増やしちゃったとこでしょうか・・・あいたたた!そろそろ本気ださなくちゃ!!

 近頃の、余計なものをそぎ落とした、やわらかくひらいた文章も好きですが、昔の硬質的な、きらめく文章もたまりません!
 村上春樹は、いつ、どれを読み返しても良い。わたしの中で、そういう結論になりました。
 

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