おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2011/02/05 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
田舎の紳士服店のモデルの妻
著者:宮下奈都
出版社:文藝春秋
しまった。なんでよんじゃったんだろう。
読み終えてしばらく呆然としてしまいました。
何年か前、小さな子どもを持つ友達が、しあわせそうにほほえみながら、
『人生、早く終えてしまいたい』と言ったことがあります。
その時は、その言葉の本当の意味がわからなくてびっくりしたのですが、今はその気持ちがよーく分かるようになりました。
絶望やなげやりな意味ではもちろんなく。
子どもを持った時に、これでわたしは自分の人生の主役を降りたんだな~、という実感が、少しのさみしさと大きな安堵感とともに全身にずっしりきました。
大したことない人生ですが、主役を張っていた間、それなりにプレッシャーを感じていたようです。
これからは、自分のことは二の次、三の次でいいんだ。
この子が大きくなるのを手伝っていけばいいんだ。
じゃあ早く中学生くらいにならないかな~、結婚しないかな~、孫が産まれないかな~・・・と、いった感じに、まるで人生ゲームの「あがり」の目が出たような気になっています。
まあ、これからが長く大変なのでしょうが。
この本には、わたしのこれからの十年間が全部、書いてありました。十年早送りされてしまって、もう呆然。
知ってしまったよ・・・もうわたし、四十歳でもいいです・・・。
主人公の梨々子みたいに十年日記をつけてみたくなりました。
きっと三日坊主だな。