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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2011/02/20 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


ノンフィクション

ある小さなスズメの記録

著者:クレア・キップス

出版社:文藝春秋

ある小さなスズメの記録

 公園にあるベンチのひとつに息子と陣取ると、ぢゅく!ぢゅく!と抗議の鳴き声を上げながら、わたしたちの周りを少し離れてぴょんぴょんと跳ね回る一羽のスズメがいました。
 きっとここは彼(もしくは彼女)の指定席なのでしょう。それとも近くに巣があるのかしら。
 おそらく彼にとって一番の恐ろしい声を上げながら両足を踏み鳴らし威嚇してきます。まるでわたしたちを追い払うことができると思っているみたいに。
 本当に、スズメって無鉄砲で勇気があって面白い。

 この本の主役である一羽のスズメ、クラレンスは、無知なわたしに、小鳥にはこんなにも豊かな人生があるのだと教えてくれました。
 わたしは、少し勘違いをしていたようです。
 人生と呼べるほどの(この場合は鳥生と書けばいいのかな?なんか変・・・)意思があり、喜びや使命のようなものを感じて生きているのは人間だけで、他の生き物はただそこに在るだけだ、と思っていました。
 なんて間違った思い込みだったんだろう。

 著者のキップス夫人と共に十二年と七週と四日を生き抜いたクラレンス。
 その間彼がペットであったことは一度もありませんでした。
 自らの本能と、学習し自分のものにした知恵と、キップス夫人との交流によって生まれたユニークさで、自分の意思を持ち、貫き通していきます。
 最後まで前に進もうとするその姿がとても美しく思えました。
 世界ってすごい。

 うちの向かいの用水路に何年もたむろしているコサギやカワセミやセキレイにも、こんなにもわくわくするドラマが起きているのかしら?
 窓の外、空を見上げると思い出してはドキドキしています。

 

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