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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2011/04/02 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

タイニーストーリーズ

著者:山田 詠美

出版社:文藝春秋

タイニーストーリーズ

 四月一日、夫にまんまと騙されてしまいました。

 エイプリルフール!と、言われた後のぽけっとした空白。その後に押し寄せるやられた~っ!というくやしさと笑い出したくなるような爽快感。

 これはまるで、山田詠美の小説を読んだ後のよう。

 短編集 タイニーストーリーズ(ちっぽけな物語、という意味だそうです)。

 この本を読んだ後、体の中を風が吹き抜けるような気持ちの良さを覚えました。(窓の外で強い風が吹いていたのでそのせいかもしれませんが・・・)

 生きる事は、嘘をつく事。
 本の中のたくさんの登場人物たちは、恋に溺れたり、つまらない見栄やプライドのために騙したり騙されたりしています。
 そして本当は皆、騙されているのに気がついているような気がします。相手や自分のついた嘘にうまく騙されようとしているみたいに。

 一番見られたくない自分の顔を、一番見せたくない相手にみっともなくさらけ出すことがこんなに気持ちが良いなんて。皆、嘘を本当に信じていながら騙されたことにもがき苦しみながらも、『やっぱりね』と、心のどこかでは肩をすくめているように思えます。

 やわらかで、あざやかで、うっとりするような美しい嘘で丁寧に包んだ後、鮮やかな手つきで読んでいるこちらの心の奥底まで、剥ぎ取り、曝け出してしまう本です。

 やだなあ。わたし、わたしのそんなところまで見たくなかったのに。

 でも、上手に騙されるのって、気持ちが良いものですね。

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