九月。新学期が始まりました。

　わたしも学校に戻らなくちゃ。
　ソファに寝転がったまま、学園の門をくぐります。

　全寮制の学園が舞台になっているこの物語は、『あしながおじさん』で有名なウエブスターの作品です。
　今から丁度百年前に書かれた本なのに、わたしが経験したのと変わらない少女達の学園生活や、友情の明るさ、楽しさに、夢中になってしまいました。
　読み進めるうちに、登場人物のうちのひとりが妙に気になりだしました。
　学園寮のコック、大崎です。
　今から百年も昔、彼はどういった経緯でアメリカに渡り、聖アーシュラ学園のコックになるに至ったのでしょう。
　彼がちらり、とページの端っこに姿を見せる度に気になってしまいます。

　十代の女の子達の仲間に入れて、とはもう言えないお年頃になってしまいました。
　けれど、コックになって大崎みたいに物語の端っこに参加させてもらうことはできないかしら？
　大崎、あなたが羨ましい・・・。

　心は、体と同じようには、なかなか老化が進まなくて困っています。
　わたしはもう、少なくとも見た目は十分すぎるほどの大人の女性なのに・・・(＠三十路)。

　いつまでも学園物語が大好きで困ってしまいます。

　好きなものって、なかなか変えられないものですね。


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