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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2011/12/01 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


文庫

東のエデン

著者:杉浦日向子

出版社:筑摩書房

東のエデン

 今の日本は、人間に例えると何歳くらいなんだろう。
 この本を読み終えてそんなことを考えました。

 文明開化を生きる若者たちの日常を描いた物語。この頃の人達は体は年老いても死ぬまで心は若者のままで、一歩でも未来に近づこうと前のめりに倒れる―そんな印象を受けます。
 日本全体が若く、力強く、今にも走りだしそうな勢いに包まれているような。

 今、未来の方を向いてみると、ご丁寧に数歩進むごとに街灯が明々とついていて遠い先まで見通せます。真っ暗な中を手探りで進んで行くスリルはみじんもありません。
 そうやってすっかりおちついて。何もかも分かった風になって。

 でも、本当は明日、何が起こるかもわからない。
 この国も明日をも知れない老人か、産声を上げたばかりの赤ん坊かなんて、わたしが決めつけられることじゃない。


 最近急に、自分が数えきれないほどの果てしない時間を経てやってきたバトンを受け取っていた事に気が付きました。何の気なしに次に渡したすぐ後に。
 手放した瞬間に、持っていたものの重さに気が付いて、怖くて後ろを振り向けないくらいです。

 わたしの決して見ることのない遠い未来へ、ひとつ先に進んでしまったバトン。
 どこまで行くのか想像するとわくわくしてきます。


 
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