引っ越しを済ませて、もうかなり時間が経ったのに、帰りたくて仕方がない。

　前に住んでいたアパートへ？

　結婚するまで住んでいた実家へ？

　得体のしれないホームシックを抱えてうつうつとしていたのですが、この本を読んでこう思ってしまった自分に驚きました。


　わたし、このうちに、『丘の屋敷』に帰りたい―。


　主人公のエレーナは、どうしてこの恐ろしく不吉な幽霊屋敷に心を捕らわれてしまったのだろう。
　彼女自身も最後まで『なぜ？』と思っていたに違いありません。

　子どもの頃、日が暮れると数えきれない程の幽霊、妖怪、化け物が家の中にも外にもいて、弟と妹と、手を握り合って過ごしたことを懐かしく思い出しました。

　そういえば、引っ越してきてからおばけのことを気にしたこともなかったなぁ・・・。


　夜中の2時にひとりでこの本を読んでいると懐かしい寒気が背筋をぞくぞくとさせてきました。

　あわててみんなの眠る寝室に逃げ込んでほっと一息つくと、なんだか少し謎のホームシックが薄くなったような気がしました。


　今、ぱらぱらと読み返してみてもちっとも幽霊が出てこないので、やはりホラー小説は真夜中を過ぎてから読むことをおすすめします。

　

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