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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2013/10/28 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

著者:山田詠美

出版社:幻冬舎

明日死ぬかもしれない自分、そしてあなたたち

 子供を産んで以来、日に日に増してゆく「母親の力」におそろしさを覚える時があります。

 わたしのことが好きで好きで、わたしが笑っていればはしゃぎ回り、少しでも機嫌が悪いと『ねえ・・・わらって?』と顔色をうかがうようなことを言ったり。
 もう朝から晩まで一挙手一投足を見張られ続けています。

 正直しんどい・・・けれど。

 わたしが呼べば鬼やお化けを呼び出す力を持っていると本気で恐れている。
 彼の欲しがるものを与えるも(金銭的都合の範囲内なら)奪うも(しつけ的観点から)自由自在。

 この子の日常の幸せと不幸せはわたしの掌の傾け方ひとつでどちらにも転がってしまうものなのだ、と思うと恐ろしくなると同時に、その影響力の凄さに胸がざわつきます。


 「母の愛」って劇薬なんですね。使用量や方法をちょっとでも間違えると大変なことになる。
 こんなに取り扱いが難しいものだったなんて。

 この力に囚われてしまわないように、正気に、客観的に自分を保つのが時々ちゃんとできているか不安になります。

 この力を無自覚に使う人は多いと思います。この物語の母親のように。本人にも手に負えない強い力。ほんの少し手を振っただけなのに木々をなぎ倒す程の風が巻き起こってしまうのに気が付かない。


 こわいなあ。気をつけよう本当に。この本を読んで以来己の力の恐ろしさに気が付いてひやひやしています。


 あと、息子よ。わたしの力を信じ崇拝してくれるのはけっこうだけれど、わたしはあなたの望みの全てを叶えられるほどの力はありません。
 キョウリュウジャ―を明日うちに連れて来てっていうのはちょっと無理だから。

 そんな期待に満ちた目をされても・・・。

 
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