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いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2015/07/06 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
忘れられた巨人
著者:カズオ・イシグロ
出版社:早川書房
ずいぶん遠くまで来たような気がするけれど、まだやっと7年。アクセルとベアトリスが夫婦として過ごしてきた年月には遠く及びません。
共に物語を歩む相棒であるべきの主人公たちが謎や秘密に包まれていて、前も後ろも何が来るかわからない手探り状態で読み進めてゆきました。
怖くてたまらないけれど、その秘密が気になってどんどん霧の奥に誘い込まれてゆくようです。
老夫婦がふたりで積み重ねた過去。夫婦の時間は彼らのほんの上澄み程度しか経験していないけれど、しあわせ、ふしあわせ、なんて一言で言い表すにはあまりに道が絡まりあっています。
不穏か平穏か、ならば今のところエブリデイ!ヘイ!オン!イエー!!…と拳を突き上げることはできるのですが。
失ってしまった記憶が、愛と絆だけではないかもしれない。思い出を取り戻そうとするベアトリスの強さと健やかさに、読んでいて食欲を失うほどあてられてしまいました。強すぎる物語は体調に影響を及ぼします。
忘れたいほどの嫌なことやつらいことほど、しっかり体内に残っているものだから、もし全て失っていても平穏に暮らしていられるのならばわたしは無理に取り戻そうとするだろうか。
なんか、弱虫な自分に出会ってしまいました。
読んでいる間、しきりに『ねぇ、もう巨人でてきた?』とか、『どんなおはなし?』などとしきりに質問されました。
う~ん、どんなおはなしかっていうとねぇ…おじいちゃんとおばあちゃんが、ふたりで「霧」の向こうに旅にいくおはなしだよ。
と、乱暴な説明をしたところで、ここ数日の小さな謎がひとつ偶然にも解かれました。
あー、最近君が言っていた『ケキ』って、霧のことだったのね!!なるほど。
ここ数日ずっと謎だったので、本当にすっきりしました。天気が『ケキ』?雲みたいな『ケキ』?
やはり、謎は解かれたほうが気持ちがいいかも。
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