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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2016/09/15 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


ノンフィクション

プリズン・ブック・クラブ

著者:アン・ウォームズリー

出版社:紀伊国屋書店

プリズン・ブック・クラブ

 読書会。いつ見ても素敵な言葉です。

 どんな本に出てくる読書会にも、うっとりしてしまいます。
 たとえそれが、刑務所の中で、囚人たちによって行われているとしても…?


 本を読むのが好きで、読んだ本の話をするのも大好きです。友達と本の貸し借りをしたり、同じ本を読んでは、その本の話で盛り上がったりしていました。

 最近は本の話をすることがすっかり少なくなってしまいました。毎日、こんなにたくさんの本に囲まれて、しあわせに働いているけれど、ひとりぼっちで本を読むのはちょっとさみしい。
 友達はたまにしか会わないし、妹は一緒に暮らしていないし、夫とは読む本が違いすぎる。
 レジで、わたしの読んだ本を購入されるお客様がいらっしゃると、感じのよい接客を越えた、にやけ顔になってしまいそうになるのをぐっと堪えています。ああ、その本についてちょっとお話ししたい…。

 人はなぜ本をよむのだろう。
 読みやすい、楽しい本を読むのももちろんいい。
 けれど、難しい、理解できない、内容も重苦しいものを
必死で読みすすめることもあります。読後に気分が悪くなっちゃう悪くなっちゃうようなものとか、何のために?
 読書はスポーツと一緒で、ちょっとつらい、苦しいものを読み遂げたあとは、どこかが少し強くなっているような気がするのです。読後に激しい筋肉痛(?)に襲われるとしても。
 その苦しい坂を、誰かが一緒に上ってくれたら。足が止まりそうな止まりそうな時に、頑張ろうね。って声を掛け合えたら。

 同じ本を読み、共感や対立する思いを、相手とどう話し合うのか。自分一人で読むだけでは見つけられなかったことが、誰かの口から出る。
 ああ、読書会って、いいなあ。

 この本はノンフィクションなので、わかやすいハッピーエンドが用意されているわけではありません。
 本を読み、心洗われた悪人が生まれ変わるような、単純な話ではありません。
 強盗に襲われた過去を持つ著者が、恐怖に打ち勝とうと足を踏み入れた刑務所の中にいたのは、心を持たない怪物たちなどではなかった。外にいるわたしたちと、囚人たちは同じ心と体を持つ人間で、ひとつひとつの選択や、そのときの環境によって、今外と中に別れて立っている。
 まったく共通点がない人たちが、1冊の本で繋がれるかもしれない。希望のようなものを感じます。


 装丁も装画もかっこいい!とりわけ好きなのは帯の言葉です。

 彼らが夢中になってになっているのはもはや麻薬ではなく書物なのだ。

 しびれる…っ!!!

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