おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2017/08/16 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
ぼくが消えないうちに
著者:A・F・ハロルド
出版社:ポプラ社
最近、息子が『ドミコ』たちのことを話さなくなってきました。
小さい頃、空想のお友だちと遊んだことのある人は多いと思います。本人が覚えていなくても、周りの大人達の思い出話の中から、ひょっこりと顔を出すあの子。大人になるにつれて、どこへともなく消えて行く、最高の親友だったあの子。
この物語の主人公ラジャーは、アマンダの想像によって生まれた男の子。アマンダの親友です。
ふたりはいつでも一緒。しかし、ある日突然アマンダと離ればなれになってしまいます。
アマンダの作り出したラジャーは、アマンダに忘れられると消えてしまいます。
ひとりになったラジャーはアマンダと再会することができるのでしょうか。
子どもの頃は誰でも持っていたはずの夢見る力。未来へと進む、生きる意思。
それはまるで魔法のように、奇跡的で強い力です。
失ってしまったように思えても、きっとそれはまだ私たちの中にあるはず。
この本は児童書ですが、大人にもぜひ読んでいただきたいです。
何度か読み返しましたが、最後の方は涙がぼたぼた落ちてきます。
大人には見えない、失ってしまったことも覚えていないかけがえのない子供時代を一瞬だけでも感じることのできるしあわせな読書時間になりました。
この本を読み終えた後、おそるおそる息子にドミコたちのことを聞いてみました。ドミコってなに?なんて聞かれたらどうしようと恐れながら。
『ドミコは学校の机の中や、校庭のすみにマンションを作って住んでるよ。授業中に机の上でわいわいしてうるさいよ』
ドミコ、いなくなってなかった…!!一瞬ほっとしましたが、改めて考えるとやっぱり心配になってくる返答です。
まったく、これだから大人ってやつは。