おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2018/02/14 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
星の子
著者:今村夏子
出版社:朝日新聞出版
病弱に生まれた娘を救いたい一心で助けを求めた両親。
そこへ差し出された手。
未熟児で生まれ、原因不明の湿疹で、ただ泣き叫び苦しんでいた娘。
ただそれだけの、ありきたりな生きる苦しみと、当たり前の親の愛情が、家族の形を少しずつ歪め、元いた場所から遠ざかっていく。
自分達だけで必死に掴まり合いながら流されていく。
「信じる」ということは、人間の善きところなはずなのに。
「疑う」ことを放棄することはそんなに愚かで罪深いことなのでしょうか。
彼らにとっての「普通のしあわせ」が読んでいるわたしの息を詰まらせ、どうしようもなく苦しくさせます。
読んでいるのか、祈っているのかわからなくなる、何を願っているのか自分でもわからないけれど、とにかく願わずにはいられなくなる物語です。