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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2018/07/24 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


ノンフィクション

しっぽをなくしたイルカ 沖縄美ら海水族館フジの物語

著者:岩貞るみこ、加藤文雄

出版社:講談社

しっぽをなくしたイルカ 沖縄美ら海水族館フジの物語

 自分のどうしても叶えたかった夢を、忘れてしまっているなんてことあるんだ。

 息子が学級文庫で出会ったこの本。何度も読んで、でもどうしても自分のものにしたいというので啓文社で購入。おじいちゃんおばあちゃん、お友だちにも薦めてついに同じ本を買ってしまった子も。

 これだけ夢中になれば次の展開は容易に予想できます。

 『美ら海水族館に行きたい!』

 いいね~!わたしも沖縄行きた~い☆

 しかし簡単には夫の許可が出ません(そりゃそうだ)ので、もうちょっと近くの水族館にイルカを見に出掛けました。

 間近で見るイルカ。迫力のイルカショーに息子は大喜びです。
 ジャンプするイルカ。
 かわいい演技をするイルカ。
 歌うイルカ。

 楽しくショーを見ているのに、なぜかごうごうと風に吹かれているような、変などきどきがわいてくる。
 イルカが近くで見えすぎて、胸が痛い。
 
 透明ボートに乗って、イルカにえさやり体験ができるので、もちろん参加しました。

 『お子さまだけでも参加出来ますよ』
 と言われたので、じゃあベンチで待っていようかな、と子どもと夫を見送っていると、やっぱりほっぺたに風が吹いたような気がして、あわててやっぱり三人で参加します!と、透明ボートに乗り込みました。

 透明の船底、足の下ほんの20センチくらいにぴったりくっついて泳ぐイルカ。
 目が合った。
 歯がぎらぎらと、大きな口が開く。
 ボートの周りをぐるりと、背びれが波を立てて走る。
 プールの横の見物人に、いたずらでいきなり水を浴びせかけるイルカ。
 大きな口ぎりぎりに、平気で魚を放り投げる子ども達。おにいちゃんを食べろ!とはしゃぐ女の子。
 イルカはふかふかしていて、ほんのり温かかった。

 「ねえねえ、40年間の人生の中で、今までイルカに触ったことってあった?」
 帰りの車内で夫に聞いてみました。
 「ない。」
 「わたしも。」
 「ぼくも!!」
 40歳、37歳、8歳で初めてイルカに触った。

 そこで急に思い出しました。
 わたし、30年前、すごくすごくイルカに触って見たかったんだった!!どうしてもイルカをなでてみたかった。
 子どもの頃の気持ちが解凍されたみたいに急にうきうきが襲ってきて、嬉しくてたまりません。
 30年前に水族館で買ってもらったガラスのイルカのペーパーウェイトにこっそり報告しました。

 子どもの本を読んで、子どもの体験に付き合っているつもりが、ひょこっと子どもの頃のわたしまで顔を出してきてなんだか楽しい。

 息子よいつもありがとうね。

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