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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2018/09/09 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

おらおらでひとりいぐも

著者:若竹千佐子

出版社:河出書房新社

おらおらでひとりいぐも

物語の主人公の桃子さんは74歳。わたしはその年のちょうど半分のところだ。
 残りの人生の、ここが折り返し地点なのかもしれない。この先どれくらいあるのだろう、子どもは8歳になった。あとたった10年ほどでお役御免になるかもしれない。
 では、その先は?

 いろいろなものが地面から沸きだす春よりも、おしまいになって全てが静かになる冬が好きです。
 晴れの日の太陽は強すぎるから、曇っているほうがほっとします。
 青春という時代は何もかも色やにおいや音が強すぎてついに馴染めないままだった。
 この小説で描かれる玄冬という時代は、なんて強く、大胆で、でもゆらぎなく美しいのだろう。
 何度も涙するところがありました。
 わたしとともに生まれ、死ぬまでだれよりもわたしのことを考え寄り添うのは、わたし自身しかいない。
 人間は皆はひとり、でもそのなかに、なんとたくさんのわたしがいるのだろう。
 孤独とは、なんて心軽いのだろう。

 ここから先の行く先があきらめがついたような、楽しみなような、一から歩きだしたような軽々とした気分にさせてくれる小説です。

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