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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2018/11/15 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

地球にちりばめられて

著者:多和田 葉子

出版社:講談社

地球にちりばめられて

言語学を研究するデンマークの青年クヌートと、故郷の島国が消滅し、留学先から戻れなくなってしまった女性Hirukoが、Hirukoと同じ国の出身者を探して旅に出る物語。

デンマーク、ノルウェー、スウェーデンなど陸続きで移動できるヨーロッパの国々の、文化や言葉の混じり合う様子を読むと、島国に住んでいることの特殊性に気が付かされます。

日本、という国をこんなにも日々意識することなく、自分が自分であるための材料をほとんど母国に頼っている。
国を選び、性別を選び、自分自身を選び取る、物語に出てくる若者たち。わたしとは全然違う。何も選ばずにここまで来てしまった。

海に守られていたのか、閉じ込められていたのかはわかりません。
ただ、 Hirukoが、消滅してしまった母国(おそらく日本)のことをどんどん失いながら、その欠片を追い求める姿に悲しみと妙な解放感を覚えながら、どんどん読み進めてしまいました。

なにもかも違うわたしたち。けれどこの地球にちりばめられた同じ流浪の民なのだ。

改めて自分の言葉や物語を大切にしたいと思います。

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