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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2020/07/02 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

著者:大前粟生

出版社:河出書房新社

ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

「つらいことがあったら誰かに話した方がいい。でもそのつらいことが向けられた相手は悲しんで、傷ついてしまうかもしれない。だからおれたちはぬいぐるみとしゃべろう。ぬいぐるみに楽にしてもらおう」


来るなら来い、と思っていた。絶対に変わるものか。100回目だって同じように血がふきでるまで傷ついてやる。こなごなに砕け散るのをみてびびりやがれ!

強くなることが、分厚く、固く、鈍くなることだとおもっていました。自分がそうなるのが本当に嫌だった。
今は本当に傷つかなくなりました。本当に亀の甲羅でもしょって生きているように、分厚い何か越しに鈍く感じるだけです。
20年前のわたしが、今のわたしを見たら幻滅するかな?
どうしてそんなの平気でいられるの?って泣かれてしまうかな…あの子怒りっぽくて落ち込みやすいからめんどくさいなあ…。

きっと昔のわたしより、今の彼らの方がもっとずっと苦しい。
世界は細分化されて、その部屋ごとのルールや振る舞いが難しすぎて、本当、どうやって息するんだっけ?レベルです。
足を踏まれることに敏感な人たち。誰かの足を踏むのが怖くて一歩も動けない人たち。

この本を読んで、ちょっとでも息ができますように。
ひとりでも多くの、彼らに読んでもらいたい本です。


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