おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2020/09/21 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
沖晴くんの涙を殺して
著者:額賀澪
出版社:双葉社
表紙のイラストでお分かりの通り、わたしたちのよく知る町がモデルとなっています。
あの階段を下りて、あの路地を抜けて、あの海に出る。べったりじゃない、押しつけがましくもない、だけど当たり前に寄り添う人々の距離感。あの町らしいなぁ。
『喜び』以外の感情を失ってしまった沖晴くん。欠けた心のままでも最良であろうとしています。ほかの感情を取り戻すことは、沖晴くんが、大きな過去を受け止めなければならないということなのです。
もう、泣きに泣きました。心を取り戻すっていいことのはずなのに、沖晴くんに、もうこれ以上進まなくていいよ、と何度も言ってあげたくなりました。
でも、沖晴くんは進んでいきます。『普通』ってこんな景色だった?彼を一人にしたくない一心で、苦しいのに最後まで一気に読み進めてしまいました。