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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2020/10/13 更新

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井上いつかがおすすめする本です。


文庫

ロボット・イン・ザ・ファミリー

著者:デボラ・インストール

出版社:小学館

ロボット・イン・ザ・ファミリー

 ポンコツロボット、タングと、ダメ男ベンの一家が帰ってきた!!
 ロボット・インザ・ガーデンから始まり4作目の小説です。

 最初は夏目漱石の小説に出てきそうな苦悩する高等遊民だったベンが、妻に捨てられ&捨てられたロボットと共に世界を旅し、なんやかんやあって家族や仕事を得て、人生をしっかり歩き始めています。

 今作でベンももう40歳。大人だ…同い年だあぁ。
 物語のハッピーエンドのその向こう。30になっても40になっても実際にゴールテープを切った!と思えるときなんて全然ない。
 毎日が手探りで、やり直しもきかないし、振り返っても楽しかったことよりモヤモヤばっかが目についてしょうがない。

 ベン、わかるよベン。子供への対応も、毎日出会うすべての人たちへの対応にわたしもいつだってオロオロしているよ。しかも娘のボニーだけじゃなくて、ロボットのタングまで育てているなんて、初めての育児どころか史上初のロボット育児だもんね。心中お察しするよ。すごいよベン!もうダメ男だなんて言わないよ!

 わたしたちのいる世界とほとんど変わらない、でもロボットやアンドロイドがここよりも普及しているこの物語がフィリップ・K・ディックの小説より怖いと思うことがあります。

 命は、生命反応で数えるのか、それともこころの数だけあるのか。
 ただ確かなのは、ボニーの苦しみもタングの怒りも子供たちのどちらが上げる泣き声も、どちらも胸を締め付けられる。
 大人も子供も、ぶつかり合ってダメージや距離感をひとつひとつ知っていくしかないみたい。

 いつになったら、爽快な気分でゴールテープを切れるのか。
 半世紀後にベッドの上でやっとガッツポーズのこぶしを上げるのか。
 まあとにかく、ベンも頑張っているのでわたしももうしばらく頑張ってみます。

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