おすすめの本RECOMMEND
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?
2020/11/19 更新
いつか読書をする人へ
井上いつかがおすすめする本です。
フィクション
空のあらゆる鳥を
著者:チャーリー・ジェーン・アンダーズ
出版社:東京創元社
魔法使いの少女パトリシアと天才科学少年のロレンス。
特別な才能を持つ正反対の二人は、周囲に理解されない者同士、奇妙な友情で結ばれてゆきます。
しかし!未来を予知した暗殺者が二人を狙う。彼らは地球の行く末を左右する運命にあった…。
と、いうあらすじなのですが、いったいどんなお話なの!?魔法?科学?ファンタジーなのかSFなのか!?
まず、表紙にやられました。
高い建物の端で身を乗り出すロレンス。
空からさかさまに彼を見つめるパトリシア。
ふたりの間を飛ぶ、たくさんの鳥たち。
読み終わった後、この表紙見るだけで泣きそうです。
ハートがぞうきんしぼり!あああ…。
14歳で二人は別れ、10年後再開した時には敵対する秘密組織の一員になっています。
どちらも世界を救おうとしているだけなのに、立っている場所から見える正義はこんなにも違う。
人類を科学で救おうとするロレンス。
地球を守るために、それに害をなすものを排除しようとするパトリシア。
これはただのSFファンタジーじゃない、本当に今起こっていることです。
人々は細かく分断され、何かを得れば、必ず何かを失う。
豊かさ、進歩、飛躍の代わりに、森やまともな空気や水を失う。
拍手喝采に見送られながら、かけがえのないものがこの世から消え続けています。
どうか、子どものころのように、パトリシアとロレンスが、ただ、話しができますように。
全然違う二人が、ただ違うままで並んで座り、お互いの全然違う話をただ聞きあうだけでいい。
本を閉じた後も、そう祈り続けてしまいます。