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いつか読書をする人へ

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井上いつかがおすすめする本です。


啓文社スタッフ「井上いつか」による本のレビューです。井上いつかがお送りするコラム!
啓文社のスタッフであり、『本の虫』としても有名な「井上いつか」がオススメする本のコラムです。さて、今回はどんな本でしょう?

2021/04/16 更新

いつか読書をする人へ


井上いつかがおすすめする本です。


フィクション

複眼人

著者:呉明益

出版社:KADOKAWA

複眼人

 自分の中を覗き込む。
 窓を開けて世界を見る。

 物語は、主にその二つだと思っていた。どちらかだと。

 この小説は、自分の奥の奥深くを突き詰めて底を抜けて全く違う場所に出ました。
 
 想像もつかない未知の世界を前へ前へと進み、自分からこれ以上ないくらい遠くへ来たと思った先にわたしの眼が見える。

 ばらばらの声と言語で語られる物語が、不協和音の大きな揺らめきの中でふいにぴったりと合う。

 不可能なのに、この世のすべての人が語る物語を聞き、一言も漏らさずにとどめておきたいと思いました。
 本を読み終え、閉じた後も物語が頭の中でわんわん鳴っていて止められません。
 物語の余韻や、その後に思いを馳せる、とは全然違います。

 永久に鳴っているかも。
 わたしが消えて、この世界が全部消えた後も、空気を震わせ続けているかも。

 うつくしい、おそろしい、くるしい、かなしい、目を背けたいのにずっと見ていたい。

 

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