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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2009/02/07 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


フィクション

しょうぼうじどうしゃじぷた

著者:渡辺茂男【作】・山本忠敬【絵】

出版社:福音館書店

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しょうぼうじどうしゃじぷた

今は中学生の長男が、まだ3歳か4歳ぐらいだった時の話です。
休日に昼寝から目覚めると、奥さんの声が聞こえてきました。私と一緒に外で遊びたがっている彼に、「お父さんが起きてくるまで絵本を読んで待ってなさい。」と言い聞かせているところでした。
「はーい」と素直に返事をした彼はお気に入りの絵本を持ち、そーっと寝室に入ってきました。私は寝たふりをして、その様子を観察することにしました。

彼は布団の隅にチョコンと座り、父親を気遣ってか小声で読み始めました。ひらがなを覚えたばかりでたどたどしく、舌足らずの読み方はとても可愛らしいものでした。また時々読むのをやめては振り向いて私の顔を覗き込み、いつ起きるのかとワクワクして待っている感じが伝わってきます。
本当はすぐに起き出して遊んでやりたい気持ちをグッと押さえて、読み終わるのを待ちました。そして読み終わると同時に目覚めた仕草をすると、「あっ、おきた!おきた!あそぼーっ!」と満面の笑顔で抱きついてきました。

その当時、彼のお気に入りの絵本だったのが『しょうぼうじどうしゃじぷた』です。
お話の主人公はもちろん消防車のじぷたですが、あまり活躍の場がありません。なぜなら彼は古いジープを改良した、ちびっこ消防車だからです。大きな火事で真っ先に出動するのは、はしご車ののっぽくん、高圧車のぽんぷくん、救急車のいちもくさん(シャレたいい名前)です。小さなじぷたは出番が無く、いつも消防署のすみっこにいて、みんなから相手にされません。じぷたも自分がちっぽけで醜い存在に思われて、寂しい日々を過ごしていました。
そんなある日、隣町の山小屋が火事になります。普段は活躍する3台も、狭く険しい山道は通れません。さあ、じぷたの登場です。

人は皆それぞれに良いところを持っています。驕ることなく、卑下することなく、自分を信じて、出来ることをただひた向きに務めていれば、必ず誰かが認めてくれます。大人が読んでも励まされる絵本です。

悩み多き年頃となった彼は、どんな思いでこの絵本を読むのでしょうか。そーっと机の上に置いてみました。感想は言ってくれませんでしたが、少し大人になった笑顔がその思いを語っているようでした。
そんな彼に将来の夢を聞いてみました。照れながら、それでもしっかりと「カー・デザイナー」と答えてくれました。書店員ではないのが少し残念ですが、あれからずっと車に熱中し続けている彼を見ていると、これも絵本の持つ力だと感じます。

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