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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2009/02/27 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
フィクション
だいじょうぶ だいじょうぶ
著者:いとうひろし◎作・絵
出版社:講談社
わが家では、2冊の絵本がみんなの目と手に届くところに置いてあります。1冊は玄関にあります。中川李枝子と山脇百合子の『ぐりとぐらの1ねんかん』です。
1年12ヶ月、月ごとの風景と季節を楽しんでいる「ぐりとぐら」が描かれています。もちろん毎月、その月のページを開いて立て掛けています。
出かける時はいつも見ています。というのは少しオーバーで、本当は時間に余裕がある時しか見ていません。それでも楽しそうに暮らしている「ぐりとぐら」を見て出勤できたときは、心なしか晴れやかな気分で仕事に向かえます。家族もみんな同じ気持ちだと思います。
もう1冊が今回ご紹介する、いとうひろし作・絵『だいじょうぶ だいじょうぶ』です。
この絵本には男の子とおじいさんが登場します。男の子は「いまよりずっとあかちゃんにちかく、おじいちゃんがいまよりずっとげんきだった」頃の事を思い出しています。
幼かった男の子は、おじいさんと手をつないで散歩をするのが大好きでした。家の近くをただ歩くだけですが、見るもの聞くもの全てが新しい発見であふれています。草も木も、石も空も、虫も犬も、多くの出会いが彼の世界を広げてくれます。
でも世界が広がることは、同時に「こわいこと」に出会うことでもあります。理由もなくいじめてくる、けんちゃんやくみちゃんがいます。大きな声でほえる犬や猛スピードの車と遭遇します。飛行機も落ちることがあることやバイ菌がいることも知ります。
不安な気持ちにとらわれ「このままおおきくなれそうにない」と心配する男の子に、おじいさんはいつも手を握り『だいじょうぶ だいじょうぶ』とつぶやくのでした。
『だいじょうぶ だいじょうぶ』、おじいさんの言葉に、男の子はまた新たな発見をします。無理して皆と仲良くしなくてもいいこと、わざとぶつかって来る車や飛行機もないこと、言葉がわからなくても心が通じること、たいていのケガや病気は治ること、世の中はそれほど悪くないこと。
そして『だいじょうぶ だいじょうぶ』の言葉で人は励まされること。
それから、ずいぶん歳をとったおじいさんは入院をします。男の子は思います。「だから、こんどはぼくのばんです。」、おじいさんの手を握り何度も繰り返します。『だいじょうぶ だいじょうぶ だいじょうぶだよ おじいちゃん』
嫌でも競争を強いられる毎日、大人も子どもも、強くなることを求められます。「頑張れ」、「しっかりしろ」、「負けるな」・・・、そんな励ましの言葉で人は強くなれるのでしょうか。その強さは本当でしょうか。
『だいじょうぶ だいじょうぶ』と声をかけてもらった男の子は、もっと別の強さを得たように思います。彼を励まし助けてくれた『だいじょうぶ だいじょうぶ』の言葉を他の人に惜しみなく伝える、しなやかであたたかい強さを・・・。
『だいじょうぶ だいじょうぶ』は、リビングの机の上に立て掛けてあります。この絵本を手に取るのは、少し沈んだ気持ちで家に帰ったときです。家族みんながそうです。今日も誰かが読んだかもしれません。
でも『だいじょうぶ だいじょうぶ』があれば、明日もだいじょうぶ。「ぐりとぐら」も楽しそうに見送ってくれます。