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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2009/07/06 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

私を変えた一言

著者:原田宗典

出版社:集英社(文庫)

定価:500円

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私を変えた一言

『我以外皆我師也』という作家・吉川英治の言葉があります。著作の『新書太閤記』や『宮本武蔵』の作中で(表現の違いはありますが)使われており、氏が好んで色紙に書かれていたそうです。自分以外の全ての人や物が先生であり、謙虚に学び続けるように自分を戒めた言葉です。
日々の生活で常にその様な態度でいたいものですが、『我以外皆我師也』という漢字が重く肩にのしかかってきて、かえって心が頑なになりそうです。
この『自分以外は皆先生である』という姿勢を忘れず、かと言って力むことなく自然に普段の態度に取り入れるにはどうすれば良いのでしょうか。

“ふとしたことで出会った人がふとした拍子でもらした言葉。それが、雨のようにじんわりと心の地層にしみ込んで、やがて清らかな水脈になり、不安を癒し希望を育み、人生をちょっとだけ変えていく。原田さんが出会った、そんな一言たちを集めてみました。”
著者は原田宗典です。必ず笑えるし、オチがあるのは明白です。“笑い”と“人生を変える一言”がどう結びつくのか不思議でしたが、『自分以外は皆先生である』という態度を身に付けるヒントが、何か見つかる予感がしました。

『子どもの頃、私は絵を描くのが苦手だった。習字の時間に、字を書くのも苦手だった。ソロバンをはじくのも苦手だったし、音楽も苦手だった。女子と手をつないで「オクラホマミキサー」を踊るのも苦手だったし、男子と手をつないで踊るのはもっと苦手だった。ようするに学校で教わることのほとんどすべてが苦手で、得意といったら木のぼりとか穴掘りや鶏の世話とか月亭可朝のモノマネとか・・・』で始まるエピソードが、独学の精神を貫いた画家・中川一政の熱い一言に不思議と繋がります。
真面目なのか、ふざけているのか、何だか良くわからない語り口ですが、その一言を著者が“深イイ”と感じるに至ったエピソードが抜群に面白く、身近に感じられて分かり易く綴られています。

『可笑しい。私はくすくす笑いながら反省した。そして反省しながら笑った。おそらく一生、私はこの一言を忘れないだろう。』

『自分以外は皆先生である』という姿勢を忘れないコツは、リラックスして周りを見渡しながら、適度に心地よいユーモラスな人や物、出来事を探してみることにあるのではないでしょうか。
そう言えば今までも、目からウロコが落ちる、背中をトンと押される、扉がスッと開く、悩みがひとつフッと消えていくという経験は、案外身近な人や些細な出来事、何気なく手にした本に書かれた一節の中から発見したものではありませんか。

『好奇心が足りませんね - 元国連難民高等弁務官 緒方貞子の一言』から始まり
『好きなことをやってごらん、必ず成功するから - 祖父 原田馥栄の一言』
『テメエは大馬鹿ヤロウだ - 評論家 小林秀雄の一言』
『馬鹿ばかしくなくっちゃ、遊びにならない。 - 友人 長岡毅の一言』
『ロオンブロオゾー 黄金バットの悪役 ナゾーの一言』
『乗っていっていいよ ガソリンスタンド「坂本商事」のご主人の一言』
『仕事は、味わいながらやるものです。 - 岐阜長良川 鵜匠の一言』

その他、著名な作家から親、友人、知人、実に多彩な19の言葉があります。

さて、どのようなエピソードからこの一言にたどり着くのでしょうか。また、この一言がなぜ“深イイ”のか、その理由に興味がわいてきませんか。
そして、人生を“大きく変えた”のではなく、“ちょっとだけ変えた”というのも、真実味があってイイ感じがしませんか。

最近、私を変えたのは、“この前の『スタッフおすすめ』面白かったよ、別にコラム書いてみる?”、『尾道坂道書店事件簿』の著者から言われた一言、そして始まったこのコラムです。

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