おすすめの本RECOMMEND
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2009/09/06 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
就職がこわい
著者:香山リカ
出版社:講談社
娘が通う高校では、先生と図書委員による『先生のおすすめの一冊』という冊子が、年に一度作成されています。
今、手元に平成21年版があります。『老人と海』ヘミングウェイ、『75歳のエベレスト』三浦雄一郎、『小説十八史略』陳瞬臣、『きみの友だち』重松清、『くまとやまねこ』湯本香樹実、『夢をかなえるゾウ』水野敬也、『警官の血』佐々木譲、『受験生、こころのテキスト』元永拓郎、『出口のない海』横山秀雄、『皆既日食と宇宙のふしぎ』下条圭美、『骨盤から治す腰痛革命』石川安彦、『16歳の教科書』7人の特別講義プロジェクト・・・
純文学の名作から歴史小説、ミステリー、絵本、エッセイ、ビジネス書、実用書まで、70冊あまりの様々なジャンルの本が紹介されています。
この冊子が素晴らしいのは、出版社・書名・著者・価格を一覧にして、“~以下の中から○冊を選び、○月○日までに・・・”という味気ない課題図書のリストとは違い、その本を選んだ先生のおすすめコメントが、200字前後で1冊ごとに添えられているところです。更に、その大半が直筆のままで掲載されており、是非読んで欲しいという気持ちが確かに伝わってきます。
そして今回、最もドキッとしたのが本書に添えられた、このコメントです。
『~どうぞこれを読みながら、「理想の仕事」を探すより仕事に耐えうる力を培う、「自分にあう仕事探し」より「就いた仕事」の中に楽しさを見つけられる自分作りをする高校生活にして下さい。』
精神科医であり大学教授でもある著者が、就職に希望が持てないばかりか、逃げ続けようとする若者に潜む「もっと根本的な生き方の悩み」に対し、現実的な解決方法を探ろうとして書かれたのが本書です。
自分が高校生の時だったらと考えると、このコメントを読み、本書を読んでも、残念ながらピンとこなかったと思います。就職はまだ先のことであり、そう言われても具体的に何をすればいいのか、見当もつかなかったと思います。
このコメントに頷けるのは、これまでの人生の半分以上を大人として、社会人として過ごしてきた年齢になった今だからです。そしてドキッとしたのも、不惑と呼ばれる年齢を過ぎてもどこか腹が据わっていない、今の自分に対して言われた感じがしたからです。
先生のコメントの様に、学生の時にこの現実に気付き、その心積もりをしておくのが理想です。ただ、その時に理解できなくても頭の片隅に留めておけば、きっと支えてくれる言葉です。もちろん、現在働いている私たちも支えてくれます。不惑を過ぎた私も、新入社員の彼も。
「理想の仕事」を探すより仕事に耐えうる力を培う、「自分にあう仕事探し」より「就いた仕事」の中に楽しさを見つけられる自分作りをする。
大丈夫、まだ間に合う。