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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2010/01/16 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


ノンフィクション

先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!

著者:小林朋道

出版社:築地書館

先生、シマリスがヘビの頭をかじっています!

書店に勤めていて楽しいことは、思いがけず面白い本に出会えることです。出会いは突然訪れます。届いた荷物を開け商品を検品している時、ふと手にした1冊が目に留まります。何だこの本、面白そう・・・。今すぐ読みたい衝動に駆られます。いやいや仕事中、仕事中。でもチョッとだけ、チョッとだけだからと自分に言い訳をしながら、そーっとページをめくります。
著者のプロフィール、はじめに、目次、どんな話が始まるのだろう、ドキドキします。しばらく読んでいると、期待は確信に変わります。間違いない、確かに面白い。思わず「オーッ!」と叫んでいます。
書店の倉庫から、朝な夕なに「オーッ!」と叫び声が聞こえるのはその為です。

著者は鳥取環境大学の教授で、動物行動学と人間比較行動学を研究されています。本書には、自然に恵まれた大学やその周辺で起こる動物や学生を巻き込んだ数々の珍(?)事件が綴られています。
『駅前広場にヤギを放しませんか?』、『駅前に残された“ニオイづけ”はタヌキの溜め糞?』、『餌は目で、ヘビはニオイで察知するヤギ部のヤギコ』、『飼育箱を脱走して90日間生きぬいたヘビの話』、『1万円をプレゼントしてくれたアカネズミ』等々、目次だけだと“何じゃこりゃ”と思う話も、読み始めると止まらなくなりズンズン読んでしまいます。

何と言っても書名にもなっている、『シマリスは、ヘビの頭をかじる』には驚かされます。そんなことが実際に起こると思いますか。20年ぐらい前に著者が発見されたそうです。「モビング」と言って最大限の注意を払いながら、捕食者にまとわりつく行為を観察していた著者は、信じられない行動を目にします。シマリスの『怖い!でもやめるわけにはいかないんだ!』という声が聞こえてきたそうです。でもシマリスは何故???詳しくは本書を読んでみてください。

また、『自分で主人を選んだイヌとネコ』も興味深い話でした。イヌのような集団性の強い動物にとって主人との関係は、彼らの生存にとても重要な要素です。意志が強く、思考が冴えたイヌは、自分にとって大きな信頼感や幸福感を与えてくれる主人を選ぼうと必死になり、時には“芝居”さえするそうです。
この章を読み、昨年末に突然天国に召されたわが家の愛犬・ブーちゃんを思い出しました。彼女は私たちをどう思っていたのでしょうか。待て!をしていても「ほふく前進」でズルズルとごはんに近づいて行っていた食いしん坊の彼女。家族に癒しと愛嬌を振りまいてくれたブーちゃんの姿が目に浮かび、ウルッとしてしまいました。

面白い本を見つけたら「オーッ!」と叫び、つい誰かに薦めたくなる。これも書店人という生き物の習性です。でも店内では叫ぶわけにはいきません。そこで担当者は、面白いと感じた本にPOPという“ニオイづけ”をしています。気になるPOPを見かけたら、その本をぜひ手に取ってみてください。貴方も「オーッ!」と叫んでしまうかも知れませんよ。

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