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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2010/03/15 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
十六の話
著者:司馬遼太郎
出版社:中央公論新社
「自分を励ますのは、過去の自分だけだよ。」
あるTV番組で紹介されていた武田鉄矢さんの言葉です。どんな些細なことでも、“あの時は踏ん張った”と言える経験があれば、その時の自分が何時も側にいて、今の自分の肩を叩いて励ましてくれるというものです。
それは上手くできたという成功体験ではなく、難儀した、辛抱した、やっと乗り越えられたという苦しかった経験だと思います。実際の経験に勝るものはありません。さすが金八先生です。
でも、もう一つ加えさせて下さい。何時も側にいて励ましてくれるもの、それは本。
私たちは、様々な人の経験や生き方を知り、励みにしたいとの思いで本を読むのではないでしょうか。
本書は、司馬遼太郎が二十一世紀に生きる人びとに伝えようとした、「歴史から学んだ人間の生き方の基本的なこと」をまとめた文集です。書名の通り、十六の章から構成されています。
なかでも小学校の国語の教科書に掲載されていた『洪庵のたいまつ』、『二十一世紀に生きる君たちへ』は、本書以外でも色々な形で紹介されていますので、目にされた方も多いと思います。
― 世のためにつくした人の一生ほど、美しいものはない。ここでは、特に美しい生がいを送った人について語りたい。緒方洪庵のことである。この人は、江戸末期に生まれた。医者であった。かれは、名を求めず、利を求めなかった。あふれるほどの実力がありながら、しかも他人のために生き続けた。そういう生がいは、ふり返ってみると、実に美しく思えるのである。 ―
『洪庵のたいまつ』はこのような文から始まります。洪庵は備中(岡山県)の人です。医学を目指したのは、生まれつき身体が弱くて病気がちだったためです。塾や道場をしばしば休み、病弱な自分に歯がゆい思いをしました。でも洪庵は、それをプラスに換えました。
― 人間は、人なみでない部分をもつということは、すばらしいことなのである。そのことが、ものを考えるばねになる。 ―
急激に変化している世の中です。今を生きている私たちは、その世の中と関わらずに暮らすことは出来ません。世間の流れに乗らなければならない、遅れをとってはいけない。
ふと周りを見渡した時、自分が遅れをとっていること、人なみにも出来ていない現実を思い知らされます。焦るばかりで、どう対応したらよいのか悩みます。
そんな時に励ましてくれるのが「過去の自分」であり、「本」を読むことで知ることが出来ることや人々の存在、ではないでしょうか。
春です。もうすぐ新しい環境に身を置くことになる人も多いはずです。
でも心配することはありません。今まで頑張ってきた「過去の自分」、これまでに読んできた「本」が貴方を応援しています。もちろん「これから読む本」も応援してくれるはずです。
貴方を応援してくれる本を探しに、私たちの店にお越し下さい、是非。