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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


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本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2010/07/20 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


ノンフィクション

ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘

著者:水木悦子 赤塚りえ子 手塚るみ子

出版社:文藝春秋

ゲゲゲの娘、レレレの娘、らららの娘

夏か来るたびに思い出す。十数年前、幼い娘と一緒に行った、ただ1度だけのラジオ体操。

広場に行くと、思っていた以上に大人の姿があった。娘はその中に一人の男性を見つけ、あーと叫んで嬉しそうに駆け出した。男性の方も、おーと言った感じで、これまた嬉しそうに両手を広げて迎えている。
男性の側には娘と同じ年頃の女の子がいたので、友だちの父親であることは理解できた。でも、このはしゃぎ様は何だ、実の父親がここにいると言うのに・・・。

しかし、うちの娘も娘だが、その友だちのお父さんは何者だ。
誰の目にも“子どもが好きです”とわからせる裏表のない笑顔、フレンドリーでそつのない接し方、いかにも“キャンプの仕切りは任せて”といった感じの健康的に日焼けした肌、キラッと光る白い歯。私が持っていないものを全て兼ね備えている、何ともムカつくオヤジではないか。
いや、だいたいその爽やかさは妙にうさんくさい。夜遅くまで働いて、朝はどんよりしているのが日本のお父さんの正しい姿ではないのか!

いくら心の中で、そんな意味のない悪態をついても、娘は戻ってこない。その友だち親子と一緒に、元気よくラジオ体操を始めている。
「♪新しい朝が来た、希望の朝~だ」
何が希望の朝だ。それよりも私の希望の娘を返せ!
とにかく早く終わることだけを願った。

娘と手をつなぎホッとしている帰りの道すがら、娘の放った一言は立ち直りかけた私を、奈落の底に再び突き落とした。

「○○ちゃんのお父さんはすっごく面白いんよ。わたし、だーい好き。」

たとえ奥さんから、「○○さんちの旦那さんはイケメンだから大好き」と言われても、これほどのショックは受けないだろう。娘は父親にとって奥さん以上に大切で愛しい、同時に悩ましい存在なのだ。

本書は書名が示すように、水木しげる、赤塚不二夫、手塚治虫の三人の娘たちが、それぞれの父親と作品を語り合った本です。父親が漫画家、それも偉大で個性的な、という特殊な環境の中で育った娘たち。本人が意識していなくとも「普通の家」ではないことは、彼女たちの人生そのものに大きな影響を与えていたことが想像できます。

聞き耳を立てるように三人の対話を読み進めていくと、驚きのエピソードが満載で確かに少し変わっているかな、とは感じます。
それでも、幼い時、そして反発をしていた思春期の頃を経て大人になっても、大好きな父親の背中を追いかけている、ごく普通の少女たちの姿が眼に浮かびます。

何と言っても父親の話しをしている彼女たちは、内容がどうであれ、とても楽しそうです。
色々な親子関係があるけど「これでいいのだ!」、そう感じさせてくれる1冊です。

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