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本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!
2011/07/24 更新
本さえあれば、日日平安
長迫正敏がおすすめする本です。
文庫
疲れすぎて眠れぬ夜のために
著者:内田樹
出版社:角川書店
体は疲れ果てている。色んな悩みが頭の中をグルグル廻っている。明日も早いので眠ろうとするが、なかなか寝付けない。
そんな夏の夜。
手にした夏の文庫の小冊子。そっと開いてみる。目にした書名の頭に、何気に「夜」と付けてみる。
夜の「坊ちゃん」、なるほど、ものすご~くやんちゃな感じがする。夜の「星の王子さま」、・・・ホスト部か。夜の「源氏物語」、確かに夜になると活躍しそうだ。
悩みではなく、変な想像が次々湧き上がってくる。夜の「〇〇会議」とするとどうなるか。
『夜の会議!ええじゃないですかー、やりましょーや』、N店長がねじり鉢巻をしている姿が目に浮かぶ。I店長はマイクを離さないだろう。Y店長は足の痛みを忘れ、一目散に駆け出す。
夜、すごっ!
― ドストエフスキーの『死の家の記録』に究極の拷問という話があります。それは「無意味な」労働のことです。半日かけて穴を掘って、半日かけてまた埋めていく。その繰り返しというような仕事に人間は耐えられません。しかし、同じような労働であっても、そこに他者との「やりとり」さえあれば人間は生きてゆけます。―
眠れないのは“疲れすぎ”の為ではなかった。悩みを一人で抱え込もうとしていたからだ。
― たとえ、穴を掘って埋めるだけというような作業でも、人がいて、一緒にチームを組んで、プロセスの合理化とか、省力化とかについて、あれこれ議論したり、工夫したりしながらやれば、そのような工夫そのもののうちに人間はやり甲斐を見出すことができます。後で埋めるだけの穴であっても、上手く掘ったり、手間をかけずに埋めるノウハウを開発して同僚からの敬意を勝ち得るというようなことがあれば、人間はそんな仕事にでも喜びを見出すことができます。仕事の話で人々が忘れがちなのは、このことです。―
目からウロコ。どうしたら仕事の喜びを、面白さを感じてもらえるか。忘れてはいけない真実が、ここにあった。
― 仕事の目的は結果として価値あるものを作り出すことではないのです。~人間が仕事に求めているのは、突き詰めて言えば「コミュニケーション」です。ただ、それだけです。やったことに対して、ポジティブなリアクションがあると、どんな労働も愉しくなります。―
明日、スタッフと話をしよう。言葉を惜しまず。あの店長に相談しよう。先輩、後輩なんて関係ない。
その前に、ゆっくり眠ろう。
でも、ねじり鉢巻のN店長が夢に出てくるのは、どうしても避けたい。