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本さえあれば、日日平安

本さえあれば、日日平安

長迫正敏がおすすめする本です。


本さえあれば、穏やかな日日。ほっこりコラム連載中です。本好きのほんわかブログ・「本さえあれば、日日平安」
本好きの、本好きによる、本好きのための“ほんわか”。一日を穏やかに過ごす長迫氏のおすすめ本はこれ!

2012/01/09 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


コミック

夜明けの図書館

著者:埜納タオ

出版社:双葉社

ショッピングサイト
夜明けの図書館

年配のご婦人が手招きしている。小走りで向かう。アイコンタクト、笑顔でいらっしゃいませ。完璧な接客モードに入る。
さあ、どんな質問でもOK牧場!

「ちょっとお兄さん、私が使うとる家計簿はどれじゃろーか?あんた知らんかねー。」

オーマイガッ!そんな分るはずが・・・。接客モードはいとも簡単に崩れ去る。でも固まっている場合ではない。腰を屈めて話を伺う。もちろん肝心の書名は出てこない。ご婦人はつぶやく、「あるはずなんよー、毎年ここで買うとるんじゃけー」
その一言が私のレファレンス魂に火をつけた。

「承知しました。」、お探ししますと家計簿の特長をお伺いする。大きさはこれぐらい、表紙には・・・、どんどんヒントが増えていく。頭に浮かんだ定番と言われている商品をご紹介する。
ご婦人が家計簿を見た。笑顔になる。

市立図書館で働く新米司書・ひなこ、担当はレファレンス。利用者の「知りたい」をお手伝いする仕事。利用者からの質問は、昔読んだ本をもう一度読みたい、あるテーマについて詳しく知りたいという一般的なものばかり、ではない。
甘くほろ苦い記憶を懐かしみ80年前の写真を探すおじいちゃん、最低の父親だったと言いながらも亡き父を追いかけ“くずし字”を解読する主婦。嘘つき呼ばわりされた少年は「光る自分の影」の謎を解き明かして自信を持ちたいと願う。哀しい都市伝説と自分を重ね悲観する女子大生もいる。

利用者から投げかけられる疑問を解いていくことは、その人の生活を垣間見ることでもある。そして時には、その人生に踏み込んでいくことも。
「余計なことまで抱え込むなよ、俺たちは資料を探すお手伝い、“本、見つけて貸し出した”、“新聞、探して見せた”、それで終わりでいいんだよ」、先輩の言葉が頭をよぎる。

でも、彼女はどんな案件にも真剣に向き合う。根気強く、何度もヒアリングを重ねる。
― 本はいつだって知る歓びをおしえてくれる、想像する愉しみや、そこから生まれる豊かな感情をも。人と本を繋げていきたい、広く、深く、そう思って、私はこの場所にいるんだ ―

「調べもの」を通して本と人、人と人、心と心を繋げていこうとする彼女。あらゆる手がかりを探り、知識を総動員し、同僚を巻き込み、難問に挑む。

「あなたに頼んでよかった。」
そう言われることがどんなに嬉しいか。それは司書も書店員も変わらないだろう。

利用者に喜んで貰うことだけを願う彼女。純粋で熱い新米司書の姿は、忘れかけていた気持ちを思い出させてくれた。

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