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本さえあれば、日日平安

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長迫正敏がおすすめする本です。


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2012/02/06 更新

本さえあれば、日日平安


長迫正敏がおすすめする本です。


文庫

秋月記

著者:葉室麟

出版社:角川書店

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秋月記

やるせない思いを胸に 友だちは去りました
今日という日のくることは さけられぬことだったのでしょう

友だちは遥かな旅路に 今いちどたたないかと
手をとってふるえる声で言ったけど あきらめたのでしょう

果てしなく広がる夢と自由とがほしかった
果てのない長い道でも なにかしら信じていたのでしょう

― 吉田拓郎・作詞 「ともだち」 ― 

一生の友がいるだろうか。
いつも一緒で、ともに笑い、ともに悩み、時に些細なことで言い争いもするが、それでもお互いを信じ、認め合っている。
なにより相手の気持ちを慮ることを学べたのは、友がいたからこそ。

同じ道を、肩を並べて歩んでいる。それがいつまでも続くものだと思っていた。
時を経て、それぞれの立場ができてきた。背負っている責任が違ってきた。本当の気持ちは抑え込み、その立場で考え、行動するようになる。いつの間にか別々の道を歩いていた。
でもそれが、大人になるということだと悟った。

「友情」とは、「心の高潔さ」とは、「己の信じる道を歩む」ということとは。
『秋月記』は、第146回直木三十五賞受賞「蜩ノ記」の作家・葉室麟が描く、一人の武士の成長物語。

「わたしは臆病だ」、妹を野良犬から守れなかった泣き虫小四郎は、ただ強くなりたかった。
だが剣の師からは意外な教えを受ける。「臆病者の剣を使え」と諭されるのだ。
「臆病者とあきらめてしまえ。怖いがゆえに夢中で剣を振るうのだ。されば無心になれよう」
小四郎は無心で刀を振るった。しだいに心が澄んでくるのを感じた。
筑前の小藩・秋月藩、十歳になる小四郎。剣の腕を上げた寡黙な小四郎に、ようやく友達と呼べる仲間ができる。

仲間との江戸での遊学を経て帰藩した小四郎。専横を極める家老・宮崎織部がいた。織部を権力の座から引き摺り下ろす。小四郎は、志を同じくする仲間の藩士たちとともに糾弾に立ち上がり、本藩・福岡藩の援助を得てその排除に成功する。
藩政の刷新に情熱を傾けようとする小四郎だったが、家老失脚の背後には福岡藩の策謀があった。自分達の「青い正義感」を利用されていたのだと分かる。
いつしか仲間との絆も揺らぎ始めて、小四郎はひとり、捨て石となる決意を固める。

去り行く友の後姿を見送る。言いようのない孤独を感じる。
しかし、人は孤独なのだと教えてくれたのも友だと気づく。自分を大人にしてくれたのは、この友だったのだ。

一生の友とは生涯続く友のことではない。一生忘れることのできない友のことだ。

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